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北條秀司「王将」(2021年長塚圭史演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
王将.jpg
KAATの芸術監督に就任した長塚圭史さんが、
2017年に新ロイヤル大衆舎として上演した、
北條秀司さんの「王将」3部作を、
装いも新たに上演しています。

前回の初演の時には第3部のみ鑑賞しました。

今回は第1部のみ鑑賞しました。

この作品は映画の「王将」の原作で、
坂田三吉はこのお芝居によって有名になり、
好評のため続編も書かれて三部作として後世に伝わっているものです。

言わば、実話を元にして創作された、
娯楽演劇の古典です。

それを自由自在に再構成し、
それぞれ2時間弱の3本の作品にまとめて、
一挙上演しているのが今回の企画です。

この作品を何故長塚圭史さんが取り上げたのかは、
ちょっと不思議な感じもするのですが、
おそらく福田転球さんの坂田三吉が見たい、
というのが一番の理由で、
過去の娯楽芝居を現代に蘇生したい、
という思いもあったのではないかと推察します。

この長塚版の2017年の初演は、
下北沢の「楽園」での小劇場密室芝居で、
濃密な反面窮屈さも否めませんでした。

今回はKAATのビルの吹き抜けのロビースペースを、
そのまま即席芝居小屋風に改造し、
かなり解放感のある舞台を作り上げています。

野外劇風ですが、
ビルの中ですから雨風の心配はありませんし、
なかなか上手く考えたな、と感心しました。

これ、最初に大堀こういちさんが登場して、
いつもの「すべりっぱなしのギャグ満載」で、
明治から大正、昭和の情景描写をするんですね。
これがなかなかいいですね。
ただ、隣で見ていた妻は、
「何、あのすべりっぱなしの詰まらない人は!」
と怒っていましたから、
それはもう大堀さんを許せるかどうかによるのだと思います。
これは落語や講談に近いセンスですよね。

今回は第一部を観たのですが、
前半はどうかな、という感じもあったのですが、
重層的に色々な要素が重なり合って、
涙を振り絞るラストに至る辺りは、
さすが娯楽芝居の王道という感じで、
とても感銘を受けました。

ただ、正直なところ、
福田転球さんが主役というのは、
ちょっときつい面がありますね。
僕も福田さんのお芝居は大好きなのですが、
主役の芝居ではないんですね。
癖のあるスーパーサブなんですよね。
これは矢張り、色気のある昔のスターがやらないと、
成立しないお芝居ではあるように感じました。

そんな訳で舞台をトータルに評価するとなると、
今一つという部分があるのですが、
楽しく意欲的な試みであることは間違いがなく、
今回は再演ですが、
今後KAATの舞台で、
長塚さんらしい意欲的な楽しくワクワクする企画が、
多く実現することを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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