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SPRINT試験最終解析結果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SPRINT試験最終解析.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年5月20日掲載された、
高血圧治療の目標値についての、
有名な臨床試験の最終解析結果についての論文です。

有名なSPRINTと呼ばれるアメリカの臨床試験があります。

これはアメリカの102の専門施設において、
収縮期血圧が130mmHg以上で、
年齢は50歳以上。
慢性腎障害や心血管疾患の既往、
年齢が75歳以上など、
今後の心血管疾患のリスクが高いと想定される、
トータル9361名の患者さんを登録し、
くじ引きで2群に分けると、
一方は収縮期血圧を140未満にすることを目標とし、
もう一方は120未満にすることを目標として、
数年間の経過観察を行ない、
その間の心筋梗塞などの急性冠症候群、
脳卒中、心不全、心血管疾患のよる死亡のリスクを、
両群で比較するというものです。

平均観察期間は5年間とされていました。
しかし、平均観察期間3.26年の時点で終了となりました。
これは開始後1年の時点で、
既に統計的に明確な差が現れ、
かつ血圧を強く低下させることにより、
腎機能の低下にも明確な差が現れたことで、
それ以上の継続の意義がない、
と考えられたからです。

その結果は当初の予想を上回るものでした。

収縮期血圧120未満を目標とした、
強化コントロール群は、
140未満を目標とする通常コントロール群と比較して、
トータルな心血管疾患とそれによる死亡のリスクが、
25%有意に低下していたのです。
(Hazard Ratio 0.75 : 95%CI 0.64-0.89)

このSPRINT試験は、
その後観察期間に入り、
治療期間終了が2015年8月20日で、
その後は血圧コントロール目標を明確には定めない、
観察期間が2016年7月29日まで継続されています。

今回の論文では、
その観察期間も含めた解析が行われています。

その結果、
中間値で3.33年の観察期間において、
強化コントロール群は通常コントロール群と比較して、
心筋梗塞などの急性冠症候群、脳卒中、急性心不全を併せたリスクは、
27%(95%CI: 0.63から0.86)、
総死亡のリスクも25%(95%CI: 0.61から0.92)、
それぞれ有意に低下していました。

ただ、低血圧や電解質異常、急性腎障害や腎不全、
失神などの重篤な有害事象は、
強化コントロール群で有意に増加していました。

治療後の観察期間を併せた中間値で3.88年の解析でも、
同様の疾患リスクや総死亡リスクの低下は認められましたが、
急性心不全のリスクについては両群で有意な差はなくなっていました、

このように、
降圧目標を120mmHg未満とするような、
血圧の強化コントロールは、
心疾患疾患のリスクや死亡リスクを、
有意に低下させる効果があり、
その影響は治療終了後も1年は継続されていましたが、
その一方で低血圧や電解質異常、腎障害などのリスクを伴うこともまた事実で、
その低血圧に伴うリスクと、
心血管疾患のリスクを慎重に天秤に掛けながら、
個別のベストの降圧目標を決定する必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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