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「ビニールの城」(唐組・第67回公演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ビニールの城.jpg
唐組で2019年に上演された「ビニールの城」が、
今新宿の花園神社で再演されています。

これは1985年に第七病棟で初演された、
傑作の誉の高い作品で、
2019年の唐組での上演も、
非常に充実した唐イズム溢れる見事な舞台でした。

今回はその待望の再演ということになります。

稲荷卓央さん、藤井由紀さん、久保井研さんという、
2019年の主要3キャストはそのままで、
前回は岡田悟一さんが演じた引田が、
マシュマルウェーブの木村健三さんにスライドし、
バーテンの影山翔一さん、
河合の全原徳和さんも再登板です。

これは今思うと唐先生の戯曲の1つの分岐点、
という感じのするお芝居ですね。

主人公の腹話術師が、
安アパートに住む孤独な中年男で、
生身の存在を受け付けないという、
とても特殊な孤独を身にまとっているんですね。
彼に思いを寄せる元ビニ本の女のモモは、
腹話術の人形と同じ名前の男と結婚して、
疑似家族を作るのですが、
その疑似家族を含めて、
結構生々しい生活感が描写されていて、
この生活感のようなものは、
それまでの唐戯曲には、
あまり姿を見せなかった性質のものだと思います。

その後状況劇場が解散して唐組の時代になると、
生活感のある孤独のようなものが、
むしろ題材としてクローズアップされてくるのですが、
その端緒はどうやらこの「ビニールの城」辺りにあるようです。

そのため、
唐組での上演に、
このお芝居は結構フィットしたのだと思います。

今回は特に1幕がとても良かったですね。
これはもう完璧と言ってもいいくらい。
人物の登場のさせ方もワクワクするすばらしさですし、
謎が次第に露わになって幕切れに至る辺りの構造は、
これはもう唐先生の戯曲の中でも、
屈指の精度だと改めて思います。

この芝居は2幕の前半に動きがあって、
主人公の2人が後半になるまで出逢わない、
というのが1つの特徴なのですが、
そのドタバタもテントならではの活力で表現されていましたし、
ラストの美しさも格別でした。
ただ、肝心のビニール越しにモモが空気銃を撃つ場面は、
2019年の方が抒情に溢れていたように感じました。
これは好みの問題かもしれませんが、
もう少し後半はじっくりとやって欲しかった、
というようには感じました。
下手だけの芝居で、
ちょっとダイナミックさにも欠けていましたよね。

いずれにしても、
唐組の芝居はこれまで全て観ていますが、
最高の1本であることは間違いがなく、
実はもう一度行く予定なのですが、
いつまでテントがあるか分かりませんし、
いつまで行けるかも分かりませんので、
これはもう目と心と肉体に全てを焼き付けて、
悔いのないようにしたいと思っています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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