SSブログ

大腸ポリープの家族歴と大腸癌との関連(スウェーデンの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ポリープと大腸癌.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年5月4日ウェブ掲載された、
大腸ポリープの家族歴と大腸癌リスクとの関連についての論文です。

大腸癌はスクリーニング(検診)の有効性が、
確認されている数少ない癌の1つです。

大腸癌の多くは、
腺腫性ポリープから遺伝子変異が集積して、
発癌に至ることが分かっています。
そのため、大腸内視鏡検査でポリープを早期発見し、
それを内視鏡的に切除することにより、
大腸癌は予防され、
検診による生命予後の改善も確認されているのです。

家族性腺腫性ポリポーシスという遺伝性の疾患があり、
これは大腸などにポリープが多発して、
放置すれば高率に癌化するという病気です。

ただ、そうした病気がなくても、
通常の腺腫性ポリープも家族で発生しやすい傾向はあり、
大腸ポリープの家族歴は、
大腸癌発症の一定のリスクであると想定されていますが、
それではどのくらいのリスクがあるのか、
という点については、
あまり明確なことが分かっている訳ではありません。

今回の研究は、
国民総背番号制が取られているスウェーデンにおいて、
大腸癌の事例68060名を、
条件をマッチさせた333753名のコントロールとマッチングさせて、
大腸ポリープの家族歴と、
その後の大腸癌リスクとの関連を比較検証しています。

その結果、
親など一親等に大腸ポリープがあると、
その後の大腸癌リスクは1.40倍(95%CI:1.35から1.45)、
有意に増加していました。
ポリープの種類で分けると、
過形成性ポリープは1.23倍に対して、
腺腫性ポリープは1.44倍となっています。

この大腸ポリープの家族歴と大腸癌との関連は、
一親等の大腸ポリープ患者が2人以上では、
1.70倍(95%CI:1.52から1.90)、
家族の大腸ポリープの診断が50歳未満であると、
1.77倍(95%CI:1.57 から1.99)と、
それぞれ高くなっていました。

特に年齢が50歳未満で診断された大腸癌のリスクに限って解析すると、
一親等の大腸ポリープ患者が2人以上では、
3.34倍(95%CI:2.05から5.43)とより高くなっていました。

このように一親等に大腸ポリープの患者さんが、
特に2人以上いる場合の大腸癌発症リスクは高く、
大腸癌スクリーニングをどのような対象者に行う必要があるかは、
こうしたデータも取り入れつつ、
検証される必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。