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「顔のない眼」(1960年フランス映画) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
顔のない眼.jpg
怪奇映画の名作を振り返る3連発の第3弾は、
フランス怪奇映画の大傑作「顔のない眼」です。

1960年のこれはモノクロ映画で、
当時はモノクロとカラーの映画が半々くらいですかね。
内容によりモノクロの方が気分が出るものはモノクロで、
というのが当時のスタイルだったと思います。

これは物凄く即物的な映画で、
怪奇映画なのですが、
超自然的な怪物や現象などは皆無です。
では何が怖いのかと言うと、
それは勿論「人間」なのですね。

天才外科医の美しい娘が、
事故に遭って二目と見られぬ顔に、
なってしまうんですね。
それで娘は仮面を付けて、
古城のような家の中に引き籠っているのですが、
その娘の顔を元に戻そうと、
天才外科医は昔自分が手術した部下の女性に命じて、
娘と同じ年代の少女をさらって来て、
殺してその顔の皮を剥がし、
それを自分の娘に移植しようとする、
という話です。

酷いでしょ。

その手術がなかなか上手くいかなくて、
最初は良くても移植した皮膚が、
どんどん壊死してしまうんですね。
それでまた別の娘をいけにえに…
ということを繰り返しているのですが、
外科医の娘も精神に異常を来して、
獰猛な犬に父親を食い殺させると、
仮面を付けて森の中に消えてゆくのです。

思わず呆然として、
自分も死にたくなってしまうようなラストです。

ともかく救いの欠片もないような非情な話で、
非人間的過ぎて却って清々しい感じすらします。
こうしたムードはフランス映画以外ではまずないですね。

これ、当時としては非常に生々しい手術場面があって、
モノクロである分凄みがあるのと、
下品になり過ぎないんですね。
日本公開当時にはそれが残酷過ぎるとして問題になり、
手術場面をカットした短縮版が作られたようです。

この映画はテレビなどでは殆ど見る機会がなくて、
僕は初見はフィルムセンターの「フランス映画特集」だったのですが、
フィルムセンンターであるにも関わらず、
上映されたのは手術シーンのない短縮版でした。

高校生の時でしたが、
とてもとてもがっかりしました。

その後ビデオテープでソフト化されて、
こちらは完全版だったので、
その時に初めて全うな形で鑑賞した、
ということになります。
大学生の時でした。

この映画はバランスがいいんですね。
即物的な狂気の世界を描いているのですが、
それでいて高い幻想性があるんですね。
舞台を古城に設定していて、
ゴシックホラーの現代版を狙っているんです。
少女が白いマスクで顔を隠して、
古城を彷徨う場面とか、
ラスト森の中に消えてゆくところとか、
ゴシックホラーそのものなのですが、
それでいて「怪物」ではなく、
事故に遭った悲しい少女であるに過ぎない、
というところがとても複雑な味わいを出しています。

このマスクもとても印象的で、
後に「犬神家の一族」の助清のマスクは、
これが元ネタなんですね。

マッドサイエンティストものの変形ですが、
まあ実に上手く考えましたよね。
公開当時も多くの亜流を生んで、
二番煎じの「顔のない眼」みたいな映画が世界中で量産されました。
今でも似たような映画はあるでしょ。
全てオリジナルはこの映画で、
それも今に至るまでこの映画を超えた作品は、
1本もないと断言出来ます。

古典であり、カルトである、
という凄い映画です。

フランジュ監督の映画は、
他にも怪奇映画めいたものもあり、
それから屠殺場のドキュメンタリーとか、
変なものもあるのですが、
幾つか見ましたがそれほど冴えたところはないのですね。
この映画のみ突然変異的に良く出来ている、
というのが実際であるようです。

この映画に関してはそれほど多くのヴァージョンはなく、
手術場面のない短縮版がある、
というだけであるようです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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なり

ごめんなさい。ファーザーの記事へのコメントを間違えてこちらの記事に残してしまいました。
by なり (2021-06-14 10:02) 

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