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アスピリンと経口抗凝固剤併用治療のリスクと有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンと抗凝固剤の併用治療.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年4月19日ウェブ掲載された、
アスピリンと直接作用型経口抗凝固剤の併用による、
有害事象と効果を評価した論文です。

アスピリンは心血管疾患の二次予防などに、
広く使用されている抗血小板剤です。

一方で心房細動という不整脈における、
脳塞栓症などの予防や、
下肢静脈血栓塞栓症における、
肺血栓塞栓症の予防などには、
抗凝固剤という、
より強力に血液の凝固を抑える薬が使用されます。

古くから使用されているのが、
注射薬のヘパリンと経口薬のワルファリンで、
最近その利便性からその利用が増えているのが、
直接作用型経口抗凝固剤と呼ばれる薬です。
プラザキサやイグザレルト、エリキュース(いずれも商品名)、
などがそれに当たります。

仮に心房細動の患者さんが心筋梗塞を起こしたり、
心臓の弁置換術を行ったような場合には、
より強力な抗凝固療法が必要との観点から、
アスピリンと経口抗凝固剤を併用することもあります。
こうした併用は出血のような合併症のリスクを高めるのですが、
それ以上に血栓症のリスクが勝る、
という判断があるからです。

ただ、これは欧米でより多い現象であると思いますが、
この基準を満たさない事例であっても、
心房細動や静脈血栓症でリスクの高いケースでは、
それだけでアスピリンと経口抗凝固剤が併用されることが、
多いのが実際であるようです。

これまでの臨床データにより、
ワルファリンとアスピリンの併用は、
ワルファリン単独使用と比較して、
出血リスクが高まることが示されています。

しかし、直接作用型経口抗凝固剤とアスピリンの併用については、
そのような検証がまだあまり行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカの4カ所の専門クリニックにおいて、
心房細動や静脈血栓塞栓症のために、
アスピリンと直接作用型経口抗凝固剤を併用されていて、
心筋梗塞の最近の既往や人工弁の手術などの既往のない1047名を、
他の条件をマッチさせた直接作用型経口抗凝固剤のみ使用の1047名と、
その経過を比較検証しています。

その結果、
平均で20.9ヶ月の経過観察期間において、
出血系の合併症は、
抗凝固剤単独では年間患者100人当たり26.0件に対して、
アスピリンとの併用療法では31.6件で、
併用療法では有意に出血系合併症が増加していました。
一方で塞栓症の発症は、
両群で有意な差がありませんでした。

要するに、
特別な場合を除き、
心房細動や静脈血栓塞栓症の塞栓症予防には、
経口抗凝固剤の単剤で充分で、
アスピリンとの併用は出血系合併症を増やす上に、
その予防効果には差がないので、
使用にはより慎重であるべきではないか、というのが、
今回の臨床研究の結果となっています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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