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mRNAワクチン接種後感染事例のゲノム解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン無効変異ウイルスの事例.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年4月21日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン2回接種後の感染事例の報告です。

新型コロナウイルスワクチンのうち、
ファイザー社とモデルナ社による2つのmRNAワクチンについては、
稀に生じるアナフィラキシー以外、
特に問題となるような有害事象も少なく、
その有効性は有症状の発症抑制で90%を超えるデータが、
確認されています。

ただ、この高い有効性は、
敢くまで従来型のウイルスによる感染が、
主体である場合の話です。

英国型と呼ばれる「B.1.1.7」変異株では、
それほど違いのない有効性がありそうですが、
それ以外の変異株に対する有効性は、
散発的データはあるもののまだ明確ではありません。

特に南アフリカ型やブラジル型の変異株に認められる、
E484K変異は、
他のウイルス株による中和抗体を無力化するとされ、
ワクチンや従来株による免疫が、
有効ではない可能性が示唆されています。

今回のデータはニューヨークにおいて、
ファイザー社もしくはモデルナ社のmRNAワクチンの2回の接種を終えた、
417名のその後の経過を観察したもので、
2回の接種後2週間以上が経過した時点で、
2例の新型コロナウイルスの、
有症状感染事例が確認され、
その事例を解析したものです。

この時点でニューヨークでは、
新規感染事例の72%が変異株による感染で、
26.2%は「B.1.1.7」変異株による感染、
42.9%はニューヨークで独自に発生したとされる、
「B.1.526」変異株による感染と報告されています。

ワクチン無効例の1例目は健康な51歳の女性で、
モデルナ社のワクチンを2回接種し、
その19日後に咽頭痛と発赤、頭痛が出現し、
新型コロナウイルス感染症と診断されました。

2例目も健康は65歳の女性で、
ファイザー社のワクチンを2回接種し、
その35日後に全身倦怠感や結膜充血、頭痛で発症しています。
同居するワクチン未接種のパートナーからの感染でした。

この2例の感染ウイルスの、
ゲノム解析の結果がこちらです。
ワクチン無効変異ウイルス解析表.jpg
この2名の患者は、
T95I、del142-144、D614Gという3種類の変異を共に有していて、
事例1のみE484K変異が認められています。

これはいずれもニューヨークで流行している変異株とは、
性質の異なる別の変異株で、
これが別個の流行株であるのか、
それとも突然変異的なウイルスに過ぎないのか、
その点はまだ明確ではありません。

現状新型コロナウイルス感染症の征圧のためには、
変異株の広がりを的確に把握し分析する体制と、
ワクチン接種の着実な進行との2本柱が何より重要で、
現状そうした対応が日本においてどの程度実行されているかは不明ですが、
体制の充実を是非に望みたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(補足)
記載に不正確な点がありました。
コメント欄でご指摘を受け修正しました。
(2021年4月26日午前9時修正)
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コメント 2

匿名希望

この2名の患者は、
いずれもN501Yは検出されていません。
どちらもD655Yという別個の変異が検出されていて、
事例1のみE484K変異が認められています。とありますが、

この文章は表の内容の説明でしょうか?
そうでしたら、N501YはPatient2では、
検出されていないのではなく、
まだUndeterminedではないでしょうか。

それと、D655Yは表にはないのですが、
文章中の説明にあるのでしょうか?

細かいことで恐縮ですが気になりました。
by 匿名希望 (2021-04-26 08:29) 

fujiki

匿名希望さんへ
ご指摘ありがとうございます。
取り急ぎ不正確な記載を修正しました。
by fujiki (2021-04-26 09:05) 

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