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小児への短期ステロイド治療の有害事象 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ステロイド治療の小児の副作用.jpg
JAMA Pediatrics誌に、
2021年4月19日ウェブ掲載された、
小児への短期間のステロイド使用と、
その有害事象についての論文です。

糖質コルチコイドは副腎由来のストレスホルモンで、
強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を持ち、
特にその抗炎症作用を強化した、
デキサメサゾンやプレドニゾロンなどの合成ステロイドは、
古くから喘息などのアレルギー性疾患、
膠原病や炎症性腸疾患などの慢性炎症性疾患の治療には、
広く使用され、
新薬が多く開発された今日においても、
その有用性は失われていません。

最近では新型コロナウイルス感染症の重症事例においても、
このステロイド治療のみが、
国際的ガイドラインにおいて、
明確な治療効果を有するとして評価されています。

ただ、ステロイド治療には多くの有害事象や副作用もあります。

特に長期の継続的治療においては、
医原性クッシング症候群や消化管出血、
感染症、緑内障、耐糖能異常、心血管疾患、骨粗鬆症など、
非常に多くの有害事象や副作用が起こることが分かっています。

ただ、ステロイドほど安価で有効性のある薬剤が、
他には存在していないこともまた事実で、
多くの病気においてステロイドはまだ使用されていますが、
それはそのリスクとメリットを天秤に掛けて、
慎重な判断の元に行われているのです。

さて、たとえば気管支喘息を例に取ると、
以前はステロイドの飲み薬が、
継続的に使用されていましたが、
現在はそれが全身的影響の少ない吸入ステロイド剤に変更され、
ステロイドの飲み薬や注射薬は、
急性増悪と呼ばれる悪化時のみに、
短期間使用されるのが一般的になっています。

このステロイドの短期使用というのは、
概ね14日以内の使用のことで、
この方法であれば多くのステロイドの有害事象は、
健康上の問題にはならないと想定されています。
ただ、その根拠はそれほど精度の高い臨床データによって、
実証されているという訳ではありません。

今回の研究は台湾において、
18歳未満に使用された14日以内の経口ステロイド剤の使用履歴と、
その後の有害事象の頻度を検証したものです。

解析されたトータル4542623名の小児のうち、
23%に当たる1064587名が、
ステロイド剤の短期使用を受けていました。

その主な使用目的は、
急性呼吸器感染症とアレルギー性疾患でした。

その結果、未使用と比較した、
使用後5から30日以内のステロイド剤治療による有害事象のリスクは、
消化管出血が1.41倍(1.27から1.57)、
敗血症が2.02倍(95%CI:1.55から2.64)、
肺炎が9.35倍(95%CI:9.19から9.51)、
それぞれ有意に増加していました。

使用後31から90日の同様のリスクは、
消化管出血が1.10倍(95%CI:1.02から1.19)、
肺炎が1.09倍(95%CI:1.07から1.11)と、
30日以内よりは低いものの有意に増加が認められ、
敗血症については有意な増加は認められませんでした。

これは絶対値でみると、
処方1000人当たり年間で、
最も多い肺炎でも、
9.35件の増加にとどまっていますから、
それほど頻度の高いものではないのですが、
短期間のステロイド使用でも、
このように明確な有害事象の増加が認められることは重要視するべきで、
短期間のステロイド投与についても、
その必要性とリスクとを天秤に掛けた上で、
慎重に使用することが望ましいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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