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尿酸値と認知症との関連(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
尿酸と認知症.jpg
2021年のFrontiers in Aging Neuroscience誌に掲載された、
血液の尿酸値と認知症リスクとの関連についての論文です。

尿酸というのはプリン体の代謝産物で、
強い抗酸化作用を持つ物質でもあります。

血液中には常に一定レベル存在していて、
過剰な尿酸は尿や便から排泄されます。
尿酸が過剰に体内に存在すると、
それが関節内で結晶化し、
自己炎症による関節炎を起こします。
これが痛風発作です。

尿酸の過剰は尿管結石の原因にもなり、
腎臓に蓄積した尿酸は、
痛風腎とも呼ばれる腎機能低下の原因ともなります。

また、最近の疫学データからは、
高血圧や心血管疾患のリスクと、
尿酸の高値との間には関連がある、
というような知見も多くなっています。

その一方で尿酸には強い抗酸化作用があり、
身体の酸化を防いで、
病気の予防に繋がるのでは、という、
逆の考え方もあります。

実際に尿酸の低値は、
癌のリスク増加と関連しているという報告もあります。

それでは、認知症と尿酸値との間にはどのような関連がるのでしょうか?

その点については、
これまでにあまり精度の高いデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
これまでの臨床データをまとめて解析する、
システマティックレビューとメタ解析の手法を用いて、
血液の尿酸値と認知症との関連を検証しています。

これまでの23の臨床研究に含まれる、
トータルで5575名のデータをまとめて解析したところ、
認知症のない人と比較して、
認知症の患者では血液の尿酸値が有意に低い、
という相関が認められました。

これを認知症のタイプによってサブ解析すると、
アルツハイマー型認知症と、
パーキンソニズムを伴う認知症では、
尿酸値が低いことで認知症リスクは増加していましたが、
血管性認知症ではそうした関連は認められませんでした。

また血液の尿酸値を4分割しての検討では、
尿酸値が4.91mg/dL未満においては、
尿酸が低いほどアルツハイマー型認知症やパーキンソン病のリスクが増し、
その一方で尿酸値が最も高い5.31mg/dLを超える群では、
尿酸値が高いほど認知症のリスクも増す、
という逆の相関が認められました。

このように、
尿酸値がかなり低値であることは、
認知症のリスクの増加と関連があり、
それは血管病変ではなく、
変性疾患に限った現象であるようです。

一方で、少なくとも7mg/dLを超えるような高尿酸血症は、
認知症を含めて多くの病気のリスクになることは、
今回のデータからも否定されるものではありません。

他の多くの検査データと同じように、
尿酸値も高いことも低いことも、
程度こそ違えいずれも健康上のリスクになるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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