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COVID-19罹患後症候群の疫学データ [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ポストCOVID症候群.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年3月31日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症回復後の、
生命予後について検証した論文です。

新型コロナウイルス感染症から回復後に、
長期間だるさなどの体調不良の続くことがあることや、
心筋の異常や肺機能の異常などの所見が、
回復後も長期間持続することがあることは、
これまでにも多くの報告があります。

こうした現象をどう呼ぶかはまだ統一されていないようですが、
上記文献の記載では、
英国国立医療技術評価機構(NICE)は、
12週間以上持続する新型コロナウイルス感染に伴うと思われる、
兆候や症状を、
Long covidや、
post-covid syndrome(新型コロナウイルス罹患後症候群)、
と定義しています。
これは日本語訳は定まったものはないようです。

新型コロナウイルス罹患後症候群には多くの報告がありますが、
その対象者や解析法はまちまちで、
その罹患率も明瞭とは言えません。

今回のデータはイギリスにおいて、
新型コロナウイルス感染症に罹患して入院し、
回復して退院した47780名の患者を、
非感染者とマッチングさせて、
退院後の死亡、入院、
心血管疾患や慢性腎臓病、
呼吸器疾患や糖尿病などの発症リスクを、
比較検証しています。

その結果、
47780名の感染者の中で、
観察期間中に24.9%が再入院し、
12.3%が退院後に死亡していました。

つまり、新型コロナウイルス感染症で入院した患者のうち、
回復して退院しても、
そのうちの約8人に1人は、
数か月以内に死亡しているという、
かなりショッキングなデータです。

これを別の形で解析すると、
年間患者1000人当たり、
766人が再入院し、320人が死亡する、
ということになります。
コントロールと比較した再入院のリスクは3.5倍、
死亡のリスクは7.7倍と算出されています。

退院後の臓器疾患新規発症のリスクも、
心血管疾患発症リスクが3.0倍、
慢性肝疾患のリスクが2.8倍、
慢性腎臓病のリスクが1.9倍、
糖尿病の発症リスクが1.5倍と、
新型コロナウイルス感染事例で高くなっていました。

特に呼吸器疾患でみると、
年間患者1000人当たり、
全ての呼吸器疾患のリスクは770.5件、
新規の呼吸器疾患発症リスクは538.9件で、
これは再入院のリスクにかなり近い、
と見ることが出来ます。

重症の事例で予後が悪いのかと言うと、
必ずしもそうではなく、
集中治療室に入室した事例とそうではない事例との比較では、
退院後の呼吸器疾患と糖尿病のリスクは、
確かに集中治療室入室事例の方が高かったのですが、
死亡や再入院はむしろ集中治療室入室事例で低い、
という結果になっていました。

この新型コロナウイルス感染症回復後の死亡リスクの増加は、
70歳以上より70歳未満の年齢層でより高く、
白人種と白人種以外との比較では、
白人種以外で高いという傾向が認められました。

このように、
新型コロナウイルス感染症の入院事例では、
回復後に明確に死亡リスクの増加が認められ、
それは新型コロナウイルス感染症の急性期とは異なり、
70歳以下の年齢層でより多く、
呼吸器疾患の悪化が1つの大きな要因として考えられますが、
それだけでは説明困難な現象です。

ただ、今回の研究では、
過去の医療データから平均化したコントロールと比較していて、
新型コロナウイルス感染流行期においては、
コロナ以外の診療はかなりレベル低下が想定されますから、
その影響が大きいという可能性もあります。

いずれにしても、
今後この現象の解明が急務であり、
日本でもこうした研究が早急に行われることを、
強く希望したいと思います。

確定患者は全員登録して、
その後1年は定期的な健康観察を行うような仕組みが、
あって然るべきではないでしょうか?

これは「新型コロナ後遺症」と称して、
ワイドショーやニュースのネタにするような、
そんな次元の話ではないのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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