SSブログ

赤堀雅秋「白昼夢」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
白昼夢.jpg
赤堀雅秋さんの新作に、
赤堀さんを含む魅力的な5人のキャストが揃い、
濃厚な家族劇が今下北沢の本多劇場で上演中です。

荒川良々さんがいつものとぼけた持ち味を封印して、
高齢の父親と2人で暮らす、
引きこもりの40代中年男を演じ、
その父親に風間杜夫さん、
兄に三宅弘城さんが扮し、
引きこもりのサポートをするNPO法人の訳アリの職員に、
赤堀さんと人気者の吉岡理帆さんが扮します。

以下少しネタバレがあります。
観賞予定の方は、
必ず鑑賞後にお読みください。

これは1時間35分ほどの、
季節に合わせた4場に分かれた短い1幕劇で、
岩松了さんの家庭劇にとても近いスタイルです。
ダラダラした日常会話の中に、
何か不穏な空気のようなものが流れ、
引きこもり男が死刑になるために犯罪を犯すと言ったり、
メンヘラの吉岡さんが手首に包帯を巻いていたり、
急に号泣したり。
突然兄が弟の首を絞めたりと、
チラチラ暴力的な要素が垣間見えながら、
全体は抑制的に終始し、
背後で進行している愛憎劇が、
どのように展開し終結したのかは、
舞台上で明確に示されることはありません。
ラストは春で引きこもり男は家を出るのですが、
誰もが幸福になることはなく、
この世界の生きづらさが嫌が上にもクローズアップされ、
拾って来た王冠のようなトロフィーを持たされて、
父親が死ぬことを暗示して終演となります。

悪くはないのですが、
これなら岩松了さんには適わないな、
という感じがしますよね。

赤堀雅秋さんの芝居は、
僕は最近とても好きなのですが、
岩松スタイルを下敷きにしながら、
もっと下世話で猥雑でドラマチックな部分があるでしょ。
今回はコロナ禍で短い上演時間が確定事項であったと思うので、
あまり遊びの余地がなく、
終始抑制的なタッチで展開されていました。

もう少し時間を使って、
もう1シチュエーションくらいは入れて、
お話を膨らませて欲しかったな、
という気はしました。

これね、父親役の風間さんは、
つかこうへい事務所のかつての大スターでしょ。
兄の三宅さんはナイロン100℃で、
弟の荒川さんは大人計画でしょ。
赤堀さんはそうした人達にあこがれて、
演劇の道に入ったのだと思いますし、
その赤堀さんが連れて来る吉岡さんは、
今のテレビのスターで人気者ですよね。

これは明らかに意図的なキャスティングで、
小劇場の歴史とその行き詰まりみたいなものを、
同時に映している、という感じがあるんですね。
ナイロン100℃はあちこちに手を出して、
サラリーマン的に成功しているのですが、
モヤモヤも抱えているんですね。
一方で大人計画は華々しくデビューしたものの、
最近は確かに「偉大な引きこもり」という感じのポジションでしょ。
テレビのスターがメンヘラで、
ニーチェのありがちな引用とか、
途中で吉岡さんが「夏の夜の夢」を演じてみせたり、
極めつきはラストで王冠を持った風間さんの死ですかね。
これ多分全部裏の意味があるんですね。
それを傍観者的に赤堀さんが見ている、
小劇場演劇の死を見守っている、
というのがこの作品の裏テーマなのかも知れません。

そんな訳で、
人気者の吉岡さんにメンヘラこじらせ少女を演じさせて、
いきなり号泣させたりの無茶ぶりもさせていますし、
風間さんの不死鳥のような元気さや、
荒川さんの新生面も面白く、
個人的には不満もあるのですが、
また赤堀作品には定期的に足を運びたいな、
と思わせるお芝居でした。
ある意味とても豪華です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。