SSブログ

新型コロナウイルス感染症の抗体陽性と感染との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナの抗体と感染との関連.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年2月24日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの抗体測定と、
遺伝子検査との関連についての論文です。

ほぼほぼ分かっていることを、
なぞっている内容なのですが、
アメリカの検査機関の大規模データを活用して、
実臨床での関連を調べている点が特徴です。

新型コロナウイルス感染症の確定診断の検査のスタンダードは、
間違いなくRT-PCR検査に代表される遺伝子検査ですが、
症状が改善して治ったと臨床的には考えられても、
長期間検査は陽性となることがあります。
つまり、治ったかどうかの判断には使いにくいということと、
確実に治ったと示せる検査がない、
と言う点が臨床上の問題です。

抗体検査は、
感染に伴って、
身体が防衛のために作り出す抗体を測定するもので、
これが陽性であれば、
感染の最中を含めて、
過去に感染のあったことを示し、
陰性であれば、
感染の初期を除けば、
最近の感染はないということを示しています。

その意味では、
住民に幅広く抗体検査を行ない、
どのくらいの頻度で感染が起こっているのかを推測したり、
まず抗体を測定して、
陽性であった人のみ遺伝子検査を行なうことで、
効率良く感染者を見つけ出せるのでは、
というような試みが行われました。

しかし…

人間の身体は新型コロナウイルスの感染に対して、
多くの異なる抗体を産生しているので、
測定のための検査も、
必ずしも同じ方法で同じ抗体を測定している、
という訳ではありません。
一応スパイクという突起の部分に対応する抗体が、
一番重要ではないかと考えられていて、
その部分の抗体を測定する検査が大多数ですが、
それでも検査による違いがありますし、
場合によってはスパイクの場所に変異のあるウイルスでは、
測定されないケースも考えられます。

特定の抗体が感染後いつから血液中に現れ、
いつまで有効かと言うこともまだ分かっていません。

たとえば麻疹(はしか)のような病気では、
基本的に一度罹ると一生のうちに二度罹ることはなく、
罹ったかどうは、
血液の抗体を測れば判明するので、
大人の場合抗体が陰性の人だけワクチンを接種すれば良い、
ということになり、
至ってシンプルなのですが、
新型コロナウイルスにおいて同じようなことが言えるかどうかは、
まだ分かっていません。
感染すると少なくとも数か月は抗体が陽性になり、
その間は再感染はし難い状態になる、
ということはほぼ分かっていますが、
どのくらいの期間罹らないのか、
と言った具体的なことは、
まだはっきりしていないのが実際なのです。

今回の研究はアメリカの臨床検査機関における抗体検査のデータを、
薬局や医療機関の医療データと結び付けることにより、
抗体の陰性、陽性と、
遺伝子検査で確認される感染との関連を、
比較検証しています。

抗体検査を行なった3257478名の患者データを解析したところ、
88.3%に当たる2876773名が陰性で、
11.6%に当たる378606名が陽性でした。

抗体が陰性の患者は陽性の患者より年齢は高い傾向が見られました。

抗体価が陽性であった患者のうち、
90日間以上の経過観察中に、
18.4%は抗体が陰性化していました。

抗体陽性者において、
測定後0から30日の間で遺伝子検査が陽性となるリスクは、
陰性者の2.85倍(95%CI:2.73から2.97)と、
有意に高くなっていました。
これが31日から60日では、
陽性者は陰性者より33%(95%CI:0.6から0.74)、
61日から90日では71%(95%CI:0.24から0.35)、
90日以上では90%(95%CI:0.05から0.19)、
それぞれ有意に遺伝子検査の陽性リスクは低下していました。

これは要するに、
抗体陽性から30日以内の検査では、
もう治っていても遺伝子検査は陽性となるケースがあり、
そのためにリスクが増加している可能性が高いのですが、
それ以降は感染後で抗体が陽性になった人の、
再感染の予防効果を見ているものと思われます。
つまり、90日以降も抗体は8割以上の患者さんでは保たれていて、
その予防効果も持続していると言うことが出来ます。
ただ、逆に言うと3か月程度の期間でも、
2割近い患者さんは抗体が陰性化していて、
そうした患者さんでは再感染も起こり得るということになります。

このように抗体測定には一定の意義があるのですが、
まだその測定系も統一はされておらず、
今後その検査法を含めて、
より明確な指針が作成されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。