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新型コロナウイルス感染症の重症化と甲状腺機能 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスと甲状腺機能.jpg
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、
2021年2月19日ウェブ掲載された、
甲状腺の病気と新型コロナウイルス感染症の予後との関連についての、
解説記事です。

新型コロナウイルス感染症は、
有症状の感染者のうち8割は軽症で、
残りの2割が重症化すると報告されていて、
高齢者と男性、慢性疾患などの病気が、
その重症化のリスクを増加させると考えられています。

この重症化に関連する疾患としては、
高血圧、糖尿病、肥満などが、
ほぼ確実なものとして報告されています。

それでは甲状腺機能低下症や機能亢進症などの、
甲状腺の慢性疾患についてはどうでしょうか?

これは明確なことが分かっていません。

甲状腺機能異常は心血管疾患のリスクに、
少なからず影響を与えることが分かっています。
また、新型コロナウイルスは人間の細胞にある、
ACE2という受容体に結合して、
それが感染の最初のステップであることが分かっていますが、
体内のACE2受容体の分布には、
甲状腺ホルモンが影響を与えるという知見があります。

こうした知見からは、
甲状腺機能異常の患者さんでは、
新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいのでは、
という危惧を抱いてもおかしくはありません。

ただ、実際には新型コロナウイルス感染症の患者で、
甲状腺機能と重症化や死亡リスクとの関連が、
調査されたことはあまりありませんでした。

今回の解説記事では、
国民総背番号制が取られているデンマークにおいて、
2種類の方法で解析された疫学データにより、
甲状腺ホルモン剤が使用されている甲状腺機能低下症と、
抗甲状腺剤が使用されている甲状腺機能亢進症の患者での、
新型コロナウイルス感染症における重症化リスクと、
死亡リスクなどが検証されています。

その結果、
少なくとも治療中の甲状腺疾患の患者においては、
新型コロナウイルス感染症の重症度や死亡リスクと、
甲状腺疾患との関連は認められませんでした。

これはただ、
治療中の患者のみの解析なので、
甲状腺機能が高度に異常のある場合には、
また別の結果が得られる可能性があります。

それでも現状の理解として、
少なくとも治療により甲状腺機能が安定している患者では、
新型コロナウイルス感染症の重症化リスクは、
病気のない人と明確な違いはないと、
そう考えて大きな間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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