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新型コロナウイルス感染症変異株(英国型:VOC-202012/1)の生命予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新型コロナウイルス感染症英国変異株の生命予後.jpg
British Medical Journal誌に、
2021年3月9日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の英国型変異株の、
死亡リスクの違いを検証した論文です。

2020年にイギリスで報告された変異ウイルスは、
「B.1.1.7」変異と名付けられ、
英国公衆衛生庁(Public Health England)は、
このウイルスを「VOC-202012/01」と命名しています。

この変異ウイルスは17カ所の複数の変異が、
同時に認められているという点が特徴で、
その多くがウイルスが人間の細胞に結合する、
スパイク(突起)の部分の遺伝子に存在しています。

この変異ウイルスは日本でも全国で検出され、
変異ウイルスの9割以上を占めていて、
今後新型コロナウイルス感染の主体となるのでは、
という推測もあるほどです。

従って、このウイルスの性質を、
私達はしっかりと知っておく必要があるのです。

これまでのイギリスでの解析により、
このウイルスは従来型と比較して、
感染力が40から70%高まるのではないか、
というように報告されています。

それでは、その生命予後は、
従来型とどの程度の違いがあるのでしょうか?

今回の検証はイギリスにおいて、
2020年10月1日から2021年1月29日の間に検査センターで同定された、
54906例の変異株の感染者を、
同数の従来型ウイルスの感染者とマッチングさせて、
検査陽性となってから28日以内の死亡率を比較しているものです。

その結果、
英国型変異株感染者の死亡リスクは、
従来型の感染者と比較して、
64%(95%CI;1.32から2.04)有意に高い、
という結果が得られました。
これはこの比較的低リスクの感染集団において、
1000件検出事例当たり、
2.5件の死亡を4.1件に増加させる頻度と推計されました。

このようにリスクの幅はかなり広く、
また軽症の事例が多い集団であることは留意する必要がありますが、
英国での大規模な検証で、
この変異株の死亡リスクが、
明確に従来株より高いとされた点は重要視する必要があり、
日本においてもこうした検証を積み重ねて、
「正しく理解して正しく怖れる」必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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