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魚の摂取と心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
魚の摂取と健康.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年3月8日ウェブ掲載された、
魚の摂取量と健康への影響についての論文です。

現行のWHOなどの国際的ガイドラインにおいては、
週に少なくとも2単位(175グラム)の魚を食べることを、
心血管疾患の予防のための生活習慣として推奨しています。

魚にはEPAやDHAなどの、
脂質バランスを改善する働きを持つ脂質が多く含まれていて、
魚を多く摂る人は心血管疾患のリスクが低いとする、
多くの疫学データが存在しています。

ただ、そうした効果が明確なのは、
心血管疾患リスクが高い群が多く、
もともとリスクが低い群では明確ではありません。
また、EPAやDHAをサプリメントとして使用した臨床研究の多くでは、
その心血管予防効果は確認されていません。

今回の研究では、4つの世界規模の疫学研究のデータを、
まとめて解析することで、
この問題の再検証を行っています。

まずPURE研究という、
世界21カ国の147645名の、
その多くは心血管疾患のない一般住民を対象とした研究の解析では、
1ヶ月に魚を50グラム以下しか摂らない人と比較して、
週に350グラム以上と多く摂る人は、
心血管疾患リスクや生命予後において、
明確な差を認めませんでした。

その一方で世界40カ国の心血管疾患を持つ、
3つの疫学研究に含まれる、
世界40カ国のトータル43413名を解析した結果では、
1ヶ月に魚を50グラム以下しか摂らない人と比較して、
週に175グラム以上摂る人は、
主要な心血管疾患のリスクが16%(95%CI:0.73から0.96)、
総死亡のリスクが18%(95%CI:0.74から0.91)、
それぞれ有意に低下していました。
週に350グラム以上とより多い魚の摂取者では、
週に175グラム以上と比較して、
よりリスクが低下する、という傾向は見られませんでした。

青味の魚など、
EPAはDHAを多く含む魚の摂取量のみでみると、
その接種量が5グラム多いほど、
心血管疾患のリスクが6%(95%CI;0.92から0.97)、
低下するという相関が認められた一方、
それ以外の魚の摂取量のみでの比較では、
心血管疾患のリスクの低下は認められませんでした。

このように、
今回の検証においては、
心血管疾患の既往のある人では、
週に175グラム以上の魚を摂取することにより、
心血管疾患のリスクは低下し、
生命予後も改善することが示された一方で、
心血管疾患の既往のない人ではそうした傾向は示されませんでした。
その有効性はほぼ、
EPAやDHAの摂取と相関がありそうですが、
その一方でサプリメントとしてEPAやDHAを摂っても、
同様の効果は再現されないことから、
それ以外の要因もあるという可能性もあります。

そんな訳で、
魚の摂り過ぎは水銀などの残存のリスクもありますし、
現状はお魚を週に2回はメインのおかずにしましょう、
というくらいが健康な食生活の条件として、
妥当なところのように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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