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非代償性肝硬変に対するアルブミン静注の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルブミンの肝硬変への有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年3月4日掲載された、
非代償性肝硬変に対するアルブミンの製剤の使用の有効性についての論文です。

肝硬変は肝臓の機能が高度に低下した状態で、
血液の蛋白質が作られなくなることにより、
血液の水分は血管の外に漏出し、
身体は浮腫んで、腹水や胸水が溜まり、
呼吸状態も悪化します。

アルブミン製剤は輸血から得られた血液中の蛋白質を精製したもので、
その使用により血液のアルブミン濃度が上昇すると、
肝硬変の病態の一部はそれにより改善しますが、
その効果は輸血と同じで一時的なものなので、
血液製剤である点も考えると、
その使用は慎重に判断される必要があります。

アルブミンの使用はそれ以外に、
肝硬変に伴う感染症の予防に有効であるという考え方があります。
腹膜炎などの感染症は肝硬変の悪化のリスクを高め、
感染をきっかけとして病態が悪化し、
死に至ることが多いと報告されています。

ただ、その点についての臨床的なデータは乏しく、
予後を改善するかどうかも明確とは言えません。

今回の研究では、
イギリスの複数の医療機関において、
非代償性肝硬変で入院し、
その時点でもアルブミン値が3.0g/dL未満と低下している、
トータル777名の患者をクジ引きで2つの群に分け、
一方は通常の治療のみを行い、
もう一方は14日を上限として、
血液のアルブミン値が3.0g/dLを上回るように、
アルブミン製剤の使用を行って、
治療開始後3から15日の予後の比較を行っています。
通常治療群においても、
ガイドラインでその使用が推奨されているような、
重症な事例ではアルブミン製剤が使用されています。

その結果、
新規の感染症や腎不全、死亡を併せたリスクには、
両群で有意な差は認められませんでした。

これはあらゆる場合に、
アルブミンの使用が否定されているということではなく、
必要な場合には容認されるものですが、
血液のアルブミン濃度を正常に近く保つことにより、
短期間の患者の予後や感染予防に役立つという考え方は、
あまり実証された事実とは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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