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イベルメクチンの新型コロナウイルス感染症に対する有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
イベルメクチンの新型コロナへの有効性.jpg
JAMA誌に2021年3月4日ウェブ掲載された、
寄生虫治療薬イベルメクチンの、
新型コロナウイルス感染症に対する臨床効果を検証した論文です。

イベルメクチンというのは、
日本の大村智先生が発見した、
クラリシッドやアジスロマイシンと同じ、
マクロライド系抗菌剤ですが、
他のマクロライドのような抗菌活性はない替わりに、
寄生虫に対する強い毒性を持ち、
1980年代から、
動物用の寄生虫症の治療薬として広く使用されています。

人間に対しては、
蟯虫症などの寄生虫症、そして、
ダニによる疥癬の治療薬として、
保険適応の上使用されています。

イベルメクチンは寄生虫の細胞に存在する、
クロライド(クロール)チャネルの阻害剤で、
細胞の過分極を引き起こして寄生虫を死滅させると考えられています。

その一方このイベルメクチンは、
培養細胞などを用いた基礎実験においては、
HIV-1やデング熱ウイルス、インフルエンザウイルスなど、
多くのウイルスに対する抗ウイルス作用を持つことが報告されています。

ただ、現状臨床において明確に抗ウイルス作用が実証された、
ということはないようです。

培養細胞を使用した実験において、
細胞を新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染させ、
その2時間後に5μMのイベルメクチンを培養液に添加したところ、
未使用と比較して24時間後のウイルスRNA量は93%減少し、
48時間後には5000分の1以下に減少したと報告されています。
イベルメクチン濃度を変えた検証により、
イベルメクチンの新型コロナウイルス感染に対するIC50(50%阻害濃度)は、
2から3μMと計算されています。

つまり、基礎実験のレベルでは、
イベルメクチンは新型コロナウイルスに有効です。

しかし、その実際の臨床効果はどうなのでしょうか?

今回の臨床研究は南米コロンビアの都市カリの単独施設において、
発症から7日以内の軽症の新型コロナウイルス感染症事例、
トータル400名をくじ引きで2つの群に分けると、
患者にも主治医にも分からないように、
一方は体重1キロ当たり300μgのイベルメクチンを5日間投与し、
もう一方は偽薬を使用して、
その経過を観察しています。

その結果、
イベルメクチンの使用は、
患者の予後に明確な影響を与えることはありませんでした。

今回の臨床研究は軽症の事例のみを対象としたものなので、
それ以外の事例における有効性が否定されるものではありませんが、
少なくとも軽症の事例に使用しての有効性は、
現時点で臨床的に確認されるものではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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