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新型コロナウイルス感染症に対するインターロイキン6受容体拮抗薬の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インターロイキン6抗体の新型コロナ感染への効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年2月25日ウェブ掲載された、
サイトカインを抑制する治療の、
新型コロナウイルス感染症への有効性についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の治療については、
有効な抗ウイルス剤は見付かっておらず、
重症事例におけるステロイド(主にデキサメサゾン)以外は、
予後を明確に改善する治療もない、
という状況が続いています。

その中でこの病気の重症化には、
身体が産生する炎症物質であるサイトカインの過剰産生が、
影響しているという知見が多く得られ、
この炎症性サイトカインを抑制することで、
患者の予後改善が見込めるのではないかという期待から、
臨床においては特にアメリカにおいて、
サイトカイン抑制療法が試みられているという現状があります。

その目的で主に使用されているのが、
炎症性サイトカインの代表である、
インターロイキン6の受容体拮抗薬の使用です。

今回の臨床試験はREMAP-CAPという臨床研究の一環で、
ヨーロッパ、オーストラリアなどを中心に、
世界52カ所の集中治療室に入室した、
新型コロナウイルス感染症の患者で、
酸素療法や呼吸器、人工心肺などの治療が必要となった重症事例で、
くじ引きの上353名はインターロイキン6受容体拮抗薬のトシリツマブを、
48名は同じ作用を持つサリルマブを、
402名は通常の治療のみを行って、
その後の経過を比較検証しています。

その結果、
入院中の死亡事例は通常治療群では36%に対して、
インターロイキン6受容体拮抗薬投与群では27%で、
その使用は有意に入院中の生命予後を、
改善していると判定されました。
より長期の生存率や人工呼吸器の離脱日数など、
他の幾つかの指標においても、
インターロイキン6受容体拮抗薬使用群は、
有意な予後の改善効果を示していました。

この治療に一定の有効性が認められた、
という結果です。

ただ、同じ紙面に掲載されたもう1本の同種の研究論文では、
トシリツマブの有効性は示されませんでした。
同じ紙面の解説記事によると、
上記論文では殆どの事例でデキサメサゾンなどのステロイド剤が、
標準治療として使用されていて、
これまでの無効とされた研究では、
ステロイドはそれほど多くの事例では使用されていなかったので、
インターロイキン6受容体拮抗薬とステロイドを併用することで、
相乗効果が得られたのではないか、
という推測が記載されています。

インターロイキン6受容体拮抗薬による治療は、
単独で新型コロナウイルス感染症の予後改善に役立つ、
というほど有効性の高いものではなさそうですが、
補助的な治療としての有効性はありそうで、
今後どのような事例に有効性が高いのかなどの検証が、
実証的に行われることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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