SSブログ

新型コロナウイルス感染症濃厚接触者の隔離期間と予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
covid-19学校での隔離期間と予後.jpg
JAMA誌に2021年2月19日ウェブ掲載された、
濃厚接触者の隔離期間についてのレターです。

アメリカにおいては、
新型コロナウイルス感染症の患者の濃厚接触者は、
14日間の隔離にて経過をみることが、
現行のCDCの基準においては推奨されています。

一方でこれまでの臨床データからは、
接触から症状出現までの所謂潜伏期は、
成人では4から5日、子供では6から7日となることが多いとされていて、
この知見から接触から9日の時点までには、
多くの感染では遺伝子検査が陽性化することが想定されます。

ここで1つの考えとして、
接触から9日目に一度RT-PCR検査を施行し、
それが陰性であれば10日目からは隔離を解除する、
という方針が成立します。

これは実際に妥当な方法でしょうか?

今回のデータはアメリカ、フロリダ州のアラチュア郡において、
義務教育の学生の感染事例と、
その濃厚接触者のRT-PCR検査を行った事例を解析し、
検査を施行するタイミングと、
適切な隔離期間についての検証を行っています。

この州の規定では、
濃厚接触者は、
同時に感染した可能性のある場合には、
接触後3日の時点で遺伝子検査を施行し、
それ以外は9日目の時点で検査を行い、
9日目の検査が陰性であれば翌日からの登校が許可されています。
ただ、実際には検査の日時は、
10から14日目に遅れることもあるようです。
検査が施行されない場合には、
隔離期間は14日で設定され、
無症状であればその翌日からは登校可能となっています。

2020年8月1日から11月30日の期間において、
257名の学生がRT-PCR検査で陽性と判定されています。
この257名の感染者の濃厚接触者として、
2189名が隔離対象となり、
そのうち134名は接触後3日に、
839名は接触後9から14日後に遺伝子検査を受けています。
3日目に検査を受けた134名のうち、
陽性となったのは10.4%に当たる14名で、
9から14日の間に検査を受けた839名のうち、
陽性となったのは4.8%に当たる40名でした。
9から14日の間に検査を受けて陰性であった799例のうち、
14日を超えて症状が出現して感染が確認されたのは1例のみで、
遺伝子の解析では、
接触した感染事例とは別のウイルス株が同定されました。

要するに、
接触の後9日から14日の間で遺伝子検査を施行し、
その結果が陰性であれば、
その翌日から登校してもほぼ問題はないと判断されます。
例外の1事例も、
別のウイルスの感染が隔離期間中に起こった、
と考えられるからです。
一方で全く検査をせずに9日以降14日未満で隔離を終了すると、
最大で8.2%の学生は感染したまま登校する可能性がある、
ということになります。

このデータを元にして、
接触後9日の時点で遺伝子検査を施行して、
それが陰性で無症状であれば登校を10日目から許可する、
という考え方と、
検査はせず無症状で14日経過すれば翌日から登校を許可する、
という考え方を比較すると、
9日目に検査をして振り分ける方法の方が、
学習期間の損失を少なく出来る、と試算されました。

現状日本においては、
明確に接触からの検査の期日は規定されておらず、
概ね接触5日目以降の検査が保健所では推奨されていて、
検査が陰性であっても、
無症状で14日の隔離期間が設定されています。

この方針が現時点で誤りとは言い切れませんが、
検査の日時や回数を規定することにより、
より短期間での隔離解除を可能にすることは、
濃厚接触者の負担を軽減する点でも有意義なことは間違いなく、
今後の科学的議論を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(1) 

nice! 5

コメント 1

緒方剛

全国保健所長会では、下記2④にあるようにすでに国に提言をしています。
http://www.phcd.jp/02/sengen/pdf/sengen_20210128_teigen.pdf
by 緒方剛 (2021-02-24 10:59) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。