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風邪を引くと眠くなるのは何故か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
IL1と睡眠と免疫の関連.jpg
Brain Behav Immun. 誌に2015年に発表された論文です。

少し古いものなのですが、
最近読む機会があって、
なかなか面白かったので今日ご紹介をさせて頂きます。

風邪を引くと普段より眠くなり、
グッタリして長く眠ってしまいますね。
ただ、その一方で高熱が出ていたりして、
本当に体調の悪い時には、
却って寝ることも出来ない、
と言うような状態になることもあります。

この事実は、
風邪のような感染が身体に起こるということと、
眠りの状態とは密接に結びついている、
ということを示しています。

しかし、それを結び付けているものは何でしょうか?

最近の多くの研究により、
それがインターロイキン1という炎症性サイトカインであることが、
ほぼ明らかになっています。

インターロイキン1は代表的な炎症性物質で、
身体が風邪ウイルスのような病原体に感染されると、
それを感知して免疫細胞から産生され、
炎症を起こすことによって、
免疫力を高め病原体の侵入を撃退しようとします。
その副産物が発熱や痛みなどの、
所謂「風邪症状」です。

実はこのインターロイキン1は、
脳細胞にある受容体にも結合し、
睡眠をコントロールするような働きを持っています。

インターロイキン1を投与することにより、
それが低用量であればノンレム睡眠が増加します。
低用量であればレム睡眠にはあまり影響を与えません。
一方で高用量のインターロイキン1を投与すると、
ノンレム睡眠とレム睡眠の両者が減少し、
発熱が起こります。

この現象は、
風邪をひくと眠くなり深い眠りに落ちるけれど、
高熱が出ているような重症では、
逆に眠れなくなる、
という実際の症状と合致しています。

脳へのインターロイキン1の刺激は、
睡眠をコントロールすると共に、
免疫を活性化させて感染を抑え込みます。

上記論文では脳でのインターロイキン1の作用発現に、
重要な働きをしている、
神経特異的インターロイキン1受容体アクセサリータンパク質
(the neuron-specific interleukin-1 receptor accessory protein)
に着目し、
その遺伝子発現を出来なくしたネズミを利用して、
その働きを検証しています。

脳におけるインターロイキン1の働きは、
この受容体アクセサリータンパク質に依存していて、
その発現を出来なくしたネズミの脳に、
インフルエンザウイルスを感染させると、
通常起こる睡眠の反応や発熱の反応が起こらず、
そのネズミの生命予後は低下しました。

「よく眠れば風邪は早く治る」というのは、
広く使用されている月並みな言説ですが、
それはどうやら科学的事実でもあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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