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血圧の左右差と健康(2021年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
血圧の左右差と健康.jpg
Hypertension誌に、
2021年1月ウェブ掲載された、
血圧の左右差と心血管疾患リスクの関連についての論文です。

高血圧が心血管疾患の大きなリスク因子であることは、
多くの疫学データから実証されている事実ですが、
実際には高血圧を含む因子から算出されたリスクと、
実際の疾患の発症とは一致しないことが、
しばしばあることも指摘されています。

つまり、同程度の高血圧があり、
他の脂質異常症などのリスク因子にも差がないのに、
一方は心筋梗塞を発症し、
もう一方は発症しない、ということがある訳です。

こうした事例の1つの説明として、
同じ高血圧であったの、
細かく分類すると他の要素に差があって、
それが疾患のリスクの差に繋がっているのではないか、
という考え方があります。

そして、その1つの因子として注目されているのが、
血圧の左右差です。

右腕の血圧と左腕の血圧では、
完全に一致することはむしろ稀で、
少しの違いはむしろあることは当然です。

ただ、極端に差があるというのも、
通常ではあまりないことで、
一定レベル以上の血圧の左右差には、
病的な意味があるというのが、
一般的な考え方になっています。

これまでの報告によると、
血圧に10㎜Hg以上の左右差があるのは、
高血圧の患者のうち11%、
一般人口の4%に見られるとされています。

また血圧の左右差は、
心血管疾患や糖尿病などで多いという報告もあります。

今回の研究では、
これまでの24の臨床研究に含まれる、
トータル53827名の患者データをまとめて解析したところ、
収縮期血圧の左右差が5㎜Hg広がるごとに、
総死亡のリスクが5%(95%CI: 1.02から1.08)、
心血管疾患による死亡のリスクが6%(95%CI: 1.02から1.11)、
それぞれ有意に増加していました。
この収縮期血圧の左右差による総死亡リスクの上昇は、
血圧差が5mmHgを超えると明確化していました。

このように、
今回のメタ解析によっても、
血圧の左右差が広がるにつれ、
高血圧の患者さんの生命予後が悪化することは、
かなり明確に示されていて、
左右差が5mmHgを越えて持続するときには、
より心血管疾患のリスクは高いと判断して、
慎重に経過を観察し、
特に10mmHgを超えるような時には、
血管の狭窄の可能性も疑って精査をすることが望ましい、
と考えられました。

一般臨床の場で血圧の左右差に気を配ることは、
決してたやすいことではありませんが、
今後はより一層、
外来でも気を配りながら診療に当たりたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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