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酸素療法の目標値と予後の違いについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
酸素療法の治療ターゲット.jpg
the New England Journal of Medicineに、
2021年1月20日ウェブ掲載された、
酸素療法の目標値と患者さんの予後についての論文です。

呼吸器の病気などで血液中の酸素が低下すると、
呼吸困難などの症状が起こり最悪は死に至ります。
これが低酸素血症による呼吸不全です。

こうした症状で集中治療室に入室すると、
通常マスクなどで高濃度の酸素を吸入させる、
酸素療法が施行されます。
しかし、高濃度の酸素を吸入させると、
血液の酸素濃度(酸素分圧)は、
正常を超えて上昇することが稀ではありません。
そして高濃度の酸素は身体に有害である、
という考え方があり、
実際に血液中の酸素を上昇させるような治療を行うと、
患者の生命予後が悪化した、
というような報告もあります。

しかし、現時点ではデータも少ないことより、
ガイドラインにおいて、
酸素吸入における明確な酸素分圧の目標値は設定されていません。

今回の研究はヨーロッパ35カ所の集中治療室に入室して、
酸素療法の必要な急性低酸素性呼吸不全を来した、
トータル2928名の患者をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は動脈血酸素分圧60mmHgという、
低めの値を目標として治療を行い、
もう一方は90mmHgという、
高めの目標を設定して治療を行って、
90日以上の経過観察を行っています。

その結果、
登録後90日の時点で、
低めの酸素分圧を目標とした側の42.9%、
高めの目標を設定した側の42.4%が死亡していて、
両群に有意な生命予後の差は認められませんでした。

この低めの目標値は、
パルスオキシメーターの酸素飽和度に換算すると、
病状にもよりますが概ね90%くらいとなり、
それを超えるくらいに治療目標を設定すれば、
生命予後には大きな違いはなく、
一部の意見のように高濃度の酸素では予後が悪化する、
という考え方は今回の臨床試験では支持されなかった、
という結果になっていました。

この問題はより詳細な検証が必要ですが、
現時点でガイドラインに目標値が設定されるということは、
現時点ではなさそうと考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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