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持続性の咽頭症状に対するプロトンポンプ阻害剤の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
プロトンポンプ阻害剤の咽頭違和感症に対する効果.jpg
British Medical Journal誌に、
2020年1月7日ウェブ掲載された、
持続するのどの症状に対する、
胃酸を抑える胃薬の効果を検証した論文です。

「のどの調子がおかしい」というのは、
非常に一般的な症状で、
クリニックの外来でも、
多くの患者さんがそうした症状を訴えます。

咽頭は人間の身体がウイルスなどの感染を食い止める、
門番のような役割を果たしている場所なので、
感染が起こると速やかに炎症を起こして、
のどは腫れ、熱は痛みを出します。
のどの更に奥の部分に炎症が及ぶと、
咳や嗄声などが起こります。
この咽頭痛や咳や嗄声などの症状は、
感染自体は治癒しても長引くことが多く、
患者さんは「いつまで経ってものどの痛みがとれない」、とか、
「いつまで経っても声が嗄れて出しにくい」、
というような訴えをします。

また咽頭の違和感や何かが詰まっているような感じ、
というような症状は、
東洋医学では「気鬱」と言って、
気分がふさいでいる時の症状とされていて、
実際にメンタルな不調で、
のどの症状が持続することも多いとされています。
これは西洋医学的には、
自律神経が過敏になっている、
というような説明をされることがありますが、
そこにさほどの科学的根拠がある、
という訳ではありません。

他の咽頭の違和感の1つの原因として、
胃酸の逆流によって咽頭や喉頭が刺激され、
炎症を起こすことによる、
という説明があります。

そうしたことが確かに、
のどの症状や長引く咳の原因となることが、
ないとは言えませんが、
不思議なことに胃食道逆流症によるのどの症状という指摘は、
消化器内科の医師より耳鼻咽喉科の医師によって、
多くされているという特徴があります。

持続するのどの症状が胃酸の逆流によるものだとすれば、
胃酸を抑える薬剤によりその症状が改善する、
という可能性があります。

耳鼻科を受診した患者さんが、
胃酸の逆流が原因だから内科で診てもらえ、
と言われて受診をされることもありますし、
耳鼻科でそのままそうした薬が処方される、
というケースもあります。

これは日本だけの現象なのかしら、
と思っていましたが、
上記論文を読むと、
イギリスのプライマリケアにおいても、
咽頭の違和感に対して、
胃酸抑制剤であるプロトンポンプ阻害剤が、
処方されるケースは非常に多いようです。

しかし、実際にはその効果は、
あまり科学的に検証されたものではありません。

今回の臨床研究はイギリスの8カ所の耳鼻咽喉科のクリニックにおいて、
18歳以上で持続的なのどの症状を訴えている患者346名を、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はプロトンポンプ阻害剤のランソプラゾールを、
1日60ミリグラムという高用量で16週間使用し、
もう一方は偽薬を同じように使用して、
症状の改善の有無を比較検証しています。

その結果、
16週間の治療後の比較においても、
その後12ヶ月後のフォローにおいても、
ランソプラゾール使用群と偽薬群との間で、
のどの症状に有意な変化は認められませんでした。

つまり、のどの違和感などの症状に対して、
胃酸抑制剤を使用しても、
少なくとも現状のような使用法では、
有効な治療であるとは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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あまね

私自身も長年喉の痛みがあり、プロトンポンプ阻害剤を飲んでも効果がなかったのですが、ペインクリニックの星状節神経ブロックを3回打ったところ痛みがなくなりました。
by あまね (2021-02-15 17:30) 

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