「私をくいとめて」(2020年映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は年末でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2017年末に「勝手にふるえてろ」
という松岡茉優さん主演の映画があって、
その年私的ベストワンの傑作でした。
原作は綿矢りささんで、
その年に新聞連載していた小説が、
この「私をくいとめて」の原作です。
多分その時点で映画化が決定していたのだと思いますが、
同じ大九明子さんの脚本・監督で、
再び心震える力作が誕生しました。
主人公はのんさん演じる31歳のOLで、
「おひとりさま」として自分の世界を守ることに必死で、
常に脳内の「A」と会話をしているのですが、
林遣都さん演じるちょっと冴えない会社員に恋をして、
「おひとりさま」である自分にさよならを告げるまでの物語です。
基本ラインは「勝手にふるえてろ」とほぼほぼ一緒です。
ただ、2人の男性の間で、
妄想しながら揺れ動く前作に対して、
今回の作品では最初から男性は林遣都さん1人で、
その代わりに同じ「おひとりさま」の同士であった、
高橋愛さん演じるイタリア人と結婚した女性が登場して、
妄想自体も人格を持って登場します。
前作も同様ですが、
最初は作為的な部分が鼻につく感じがあるのですが、
中段からグイグイと演出が主人公の心理を掘り下げ、
それに応えたのんさんの芝居もとても真に迫っているので、
作為を超えて引込まれ、
後半は前のめりになるようにして観てしまいました。
ただ、前作とどちらが好きかと聞かれれば、
矢張り「勝手にふるえてろ」の方が、
凝集力は強かったと思います。
133分というのはちょっと長いですよね。
中段のイタリアの部分がちょっと浮いた感じになっていて、
その前に「おひとりさま」の温泉旅行で、
吉住さんの1人コントを観るところがあるでしょ。
あの部分がとても素晴らしいので、
結局それと同じことを、
イタリアでもう一度繰り返すことになるのが微妙でしたね。
それと「A」という妄想との対話というのが、
ちょっと設定として凡庸ですよね。
これは勿論原作通りなのですが、
前作の妄想をミュージカル化した愉しさと比較すると、
どうしてもメンヘラ的な暗さが前に出るので、
話が重くなるのですね。
それでいて、過去のトラウマや、
家族関係などには全く切り込んでいないので、
その点が中途半端には感じました。
演出は矢張り冴えてますよね。
何度かのんさんにアップで長回しで語らせるでしょ。
普通の撮り方ではその部分が作為的でくどくなるので、
そのために敢えて全体を人工的に構成しているんですね。
手や足のアップとか、どきりとしますね。
視点の切り替えが巧みで、
それが画面にリズムを与えているので、
観ていて心地良いのですね。
主人公の2人の食事の場面とか、
たまらなく素敵ですね。
これは監督の腕だと思います。
そんな訳で「勝手にふるえてろ」再び、
という感じの1本で、
個人的には前作の方が好きですが、
今回の作品も余り類例のない、
傑出した日本映画であることは確かで、
是非多くの方に観て頂きたい傑作です。
お勧めですよ。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い年末をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は年末でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2017年末に「勝手にふるえてろ」
という松岡茉優さん主演の映画があって、
その年私的ベストワンの傑作でした。
原作は綿矢りささんで、
その年に新聞連載していた小説が、
この「私をくいとめて」の原作です。
多分その時点で映画化が決定していたのだと思いますが、
同じ大九明子さんの脚本・監督で、
再び心震える力作が誕生しました。
主人公はのんさん演じる31歳のOLで、
「おひとりさま」として自分の世界を守ることに必死で、
常に脳内の「A」と会話をしているのですが、
林遣都さん演じるちょっと冴えない会社員に恋をして、
「おひとりさま」である自分にさよならを告げるまでの物語です。
基本ラインは「勝手にふるえてろ」とほぼほぼ一緒です。
ただ、2人の男性の間で、
妄想しながら揺れ動く前作に対して、
今回の作品では最初から男性は林遣都さん1人で、
その代わりに同じ「おひとりさま」の同士であった、
高橋愛さん演じるイタリア人と結婚した女性が登場して、
妄想自体も人格を持って登場します。
前作も同様ですが、
最初は作為的な部分が鼻につく感じがあるのですが、
中段からグイグイと演出が主人公の心理を掘り下げ、
それに応えたのんさんの芝居もとても真に迫っているので、
作為を超えて引込まれ、
後半は前のめりになるようにして観てしまいました。
ただ、前作とどちらが好きかと聞かれれば、
矢張り「勝手にふるえてろ」の方が、
凝集力は強かったと思います。
133分というのはちょっと長いですよね。
中段のイタリアの部分がちょっと浮いた感じになっていて、
その前に「おひとりさま」の温泉旅行で、
吉住さんの1人コントを観るところがあるでしょ。
あの部分がとても素晴らしいので、
結局それと同じことを、
イタリアでもう一度繰り返すことになるのが微妙でしたね。
それと「A」という妄想との対話というのが、
ちょっと設定として凡庸ですよね。
これは勿論原作通りなのですが、
前作の妄想をミュージカル化した愉しさと比較すると、
どうしてもメンヘラ的な暗さが前に出るので、
話が重くなるのですね。
それでいて、過去のトラウマや、
家族関係などには全く切り込んでいないので、
その点が中途半端には感じました。
演出は矢張り冴えてますよね。
何度かのんさんにアップで長回しで語らせるでしょ。
普通の撮り方ではその部分が作為的でくどくなるので、
そのために敢えて全体を人工的に構成しているんですね。
手や足のアップとか、どきりとしますね。
視点の切り替えが巧みで、
それが画面にリズムを与えているので、
観ていて心地良いのですね。
主人公の2人の食事の場面とか、
たまらなく素敵ですね。
これは監督の腕だと思います。
そんな訳で「勝手にふるえてろ」再び、
という感じの1本で、
個人的には前作の方が好きですが、
今回の作品も余り類例のない、
傑出した日本映画であることは確かで、
是非多くの方に観て頂きたい傑作です。
お勧めですよ。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い年末をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2020-12-30 09:13
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