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新型コロナウイルス感染症の家庭内感染(メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナの家族内感染.jpg
JAMA Network Open誌に、
2020年12月14日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスの家庭内感染に頻度についての、
メタ解析の論文です。

最近何度も強調させて頂いているように、
今の新型コロナウイルス感染拡大の主な原因は、
家庭内感染を防止することが、
全く出来ていないという点にあります。

つい最近クリニックで経験したケースでも、
遊び歩いていた娘さんが感染して発熱で発症し、
陽性と分かっても入院先も宿泊療養先も決まらないまま、
自宅待機が続き、
そのうちに解熱したので、
そのまま何もせず家にいて、
60代の両親が共に感染して肺炎になった、
という事例がありました。
両親の症状が悪化した時には、
もう既に元気になった娘さんは、
遊び歩いていて家にはいませんでした。

今年の夏くらいの時点では、
高齢者はなるべく出歩かずに家にいて、
ステイホームで感染を防ごうという方針で、
そう間違いではなかったのですが、
流行のパターンは日々変化していて、
現状はむしろステイホームが感染を拡大しているのです。
春には殆どの感染者は隔離されたので、
こうしたことは起こらなかったのですが、
今では家庭の中で、
感染者が数日で数倍に増加しているのです。

それを防ぐ対策は何1つ取られてはいません。

自宅待機中の患者には、
毎日1回保健所から電話が入るだけです。
それで感染拡大を防げる訳がありません。

今回の研究では、
これまでの臨床データをまとめて解析する方法で、
新型コロナウイルス感染症の、
家庭内感染の実態をまとめています。

対象となっているのは、
これまでに発表された54の研究に含まれた、
77758名の家庭内感染の事例です。

トータルで見た時の家庭内感染の頻度は、
新型コロナウイルスでは16.6%(95%CI:14.0から19.3)で、
これはSARSウイルスの7.5%(95%CI: 4.8から10.7)、
MERSウイルスの4.7%(95%CI: 0.9から10.7)と、
これまで流行したコロナウイルスと比較して、
今回の新型コロナウイルスの家庭内感染の頻度の高さが際立っています。

家庭内における二次感染は、
無症状感染の場合は0.7%(95%CI: 0 から4.9%)と低いのに対して、
有症状感染では18.0%(95%CI:14.2から22.1)と非常に高く、
成人の事例では28.3%(95%CI: 20.2から37.1)と高いのに対して、
小児の事例では16.8%(95%CI: 12.3から21.7)と相対的には低くなっていました。

家族の中では配偶者間の感染が、
37.8%(95%CI: 25.8から50.5)と非常に高く、
それ以外の17.8%(95%CI: 11.7から24.8)と、
明確な違いがありました。
家族以外の同居者への感染では、
同居者が3人以上では22.8%(95%CI:13.6から33.5)に対して、
1人との接触では41.5%(95%CI: 31.7から51.7)と、
非常に感染率が高くなっていました。

このように、
新型コロナウイルスの家庭内感染は、
他のコロナウイルスより起こりやすく、
それは大人では起こりやすく、小児では起こり難く、
同じ部屋で寝ているような、
濃厚な接触において起こりやすいと想定されます。

個人的にはこの解析結果より、
日本の今の家庭内感染の頻度は、
より高いという印象があり、
それが生活様式によるものなのか、
ウイルス自体の性質の違いによるものなのか、
感染の急拡大によるものなのか、
そうした点についての検証も、
是非必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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