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LDLコレステロールと死亡リスクとの関連(2020年デンマークの大規模データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医活動と保育園健診で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
LDLと死亡リスク論文.jpg
British Medical Journal誌に、
2020年12月8日ウェブ掲載された、
LDLコレステロールと生命予後との関連についての論文です。

悪玉コレステロールと称されることの多い、
LDLコレステロールが血液中で高値であると、
動脈硬化が進行して心筋梗塞などの発症リスクが増加することは、
多くの精度の高い臨床データにおいて実証された事実です。
また、心血管疾患のリスクの高い対象者に、
スタチンというコレステロール降下剤を使用して、
LDLコレステロールを高度に低下させると、
その発症のリスクや再発のリスクが低下することもまた、
精度の高いデータで実証されています。

ただ、心血管疾患リスクなどのそれほど高くない一般住民で、
LDLコレステロールの値がどのくらいであると、
最も生命予後に良い影響を与えるのか、
というような点については、
LDLが低いとむしろ死亡リスクが高くなる、
というような報告もあって一定していません。

今回の疫学研究は、
デンマークにおいて108243名を中間値で9.4年観察した、
非常に大規模なもので、
LDLコレステロールと総死亡リスク、
心血管疾患と癌の死亡リスクとの関連を検証しています。

その結果はこちらをご覧下さい。
LDLと死亡リスクの図.jpg
これは総死亡のリスクと血液のLDLコレステロールとの関連をみたものです。

一番上がトータルでの解析で、
真ん中はスタチンなどのコレステロール降下療法をしていない場合、
一番下は治療をしている場合です。

全体と未治療群では、
LDLコレステロールは140mg/dLくらいが、
最も総死亡リスクが低く、
それより高くても低くても、
リスクは上昇するという傾向を示しています。
一方でコレステロール降下療法の使用群では、
89mg/dLくらいが最もリスクが低い、
というように低値にグラフがシフトしています。

そして、非致死性心筋梗塞の患者さんに限った解析では、
心血管疾患による死亡リスクは、
コレステロールが高いほど高くなるという、
直線的な傾向を示していました。

今回の結果は、
ほぼこれまで想定していた結果を裏付けるもので、
心血管疾患のリスクが高い群においては、
よりコレステロールを低値にした方が、
その生命予後は改善するのですが、
心血管疾患のリスクが低い一般住民においては、
140mg/dLくらいが最も健康的なコレステロールレベル、
というように考えて良いようです。

血圧もそうですがコレステロールの場合も、
闇雲に低くすれば良いということではなく、
その個々の人の動脈硬化進行のリスクを評価して、
その上でその人にとってのコレステロールの目標値を、
定めるのが正しいあり方であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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