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新型コロナウイルス感染症治療薬ガイドライン(WHO) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
WHOガイドライン コロナウイルス.jpg
British Medical Journal誌に2020年9月4日ウェブ掲載され、
同年10月15日にアップデイトされた、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の、
WHOによる薬物治療ガイドラインです。

現行多くのガイドラインにおいて推奨されているのは、
人口呼吸器管理が必要なような重症事例において、
抗ウイルス剤レムデシビルと、
ステロイド剤(主にデカドロン)の全身投与です。
日本においてもこの2種の薬剤のみが、
新型コロナウイルス感染症の保険治療が認められています。

このうちステロイドの使用については、
RECOVERYという大規模臨床試験において、
重症の事例での36%の死亡リスク低下が確認され、
JAMA誌のメタ解析においても、
治療後28日の時点での34%の総死亡リスクの低下を認めています。
そうした結果を受けて今回のガイドラインにおいても、
酸素飽和度が90%未満となったり、
呼吸数が1分に30回を超えるような呼吸困難の状態では、
ステロイド治療を行うことが比較的強く推奨されています。

この場合のステロイドの使用量は、
デカドロン6ミリグラムを7から10日使用する、
というのが基本的な使用法で、
それ以外にプレドニンを1日40ミリグラムなども、
代用として使用が許可されています。

一方でレムデシビルについては、
最初の中国での臨床試験では明確な効果が確認されず、
その後中国以外の主に欧米での臨床試験において、
入院事例の快復までの期間を短縮する効果が確認され、
治療後29日時点の総死亡のリスクを、
27%低下させる傾向を示しましたが、
有意な差は付いていません。

この結果をどうとらえるのかは微妙なところですが、
WHOの今回の判断は、
トータルに見て有効とは言い難い、というもので、
最初のガイドラインでは弱い否定という判断になり、
10月のアップデイトでは、
明確に推奨しない、という表現になっています。

文面を読むと、
何となく中国の臨床試験の方に、
より重きを置いているというような感じがあり、
WHOの立場を考えると微妙な感じもするのですが、
客観的に見てステロイドは短期の生命予後を有意に改善していますが、
レムデシビルはそうではないので、
そうした観点からは今回の判断にも妥当性がある、
というようには言えるかと思います。

そんな訳で候補薬は多くあるものの、
結果として現時点で推奨しうるのは、
重症の事例におけるステロイドのみ、
というのは心細い感じがありますが、
良くも悪くもそれが今の医療の現状なのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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