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新型コロナウイルス感染症の患者との接触と感染リスク(シンガポールの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19の関連リスクと行為との関連.jpg
Lancet Infectious Disease誌に2020年11月2日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の感染が、
広がり易いのはどんな状況かを、
具体的に検証したシンガポールの報告です。

家庭内感染や職場での感染拡大が急速に進んでいる現在、
非常に重要な知見を含んでいると思います。

シンガポールにおいては、
新型コロナウイルス感染症の感染者と接触した人や、
その家族は、全てサーベイランスと検査が行われています。
今回のデータはその結果をまとめたものです。

2020年の1月23日から4月3日の間に、
1114名の新型コロナウイルス感染症と診断された感染者の、
濃厚接触者7770名(家庭内1863名、職場内2319名、それ以外の接触者3588名)を、
2週間経過観察し、
二次感染とそのリスクと思われる行為との関連を検証しています。
この場合家族以外の濃厚接触は、
2メートル以内の距離で30分以上接触した場合と定義されています。

濃厚接触者7770名のうち、
96.8%に当たる7518名で解析は成功していて、
家族内で5.9%、職場内で1.3%、それ以外の接触で1.3%の、
二次感染が認められました。
これは相当生活に注意していても、
このくらいの感染リスクはあるという意味です。
症状が出現した時点で遺伝子検査を行うというやり方では、
62%では診断は見落とすと推定され、
36%の感染は無症状でした。

感染リスクを高める行為としては、
家庭の同じ寝室で暮らすことは5.38倍(95%CI:1.82から15.84)、
感染者と30分以上話すことは7.86倍(95%CI: 3.86から16.02)、
それぞれその行為をしない場合と比較して、
家族内感染のリスクを有意に高めていました。
家族以外の感染では、
2人以上の感染者との接触で3.92倍(95%CI2.07から7.40)、
感染者との30分以上の会話で2.67倍(95%CI:1.21から5.88)、
感染者との車の同乗で3.07倍(95%CI:1.55から6.08)、
それぞれ有意に二次感染のリスクを高めていました、
一方で同じ物体への直後の接触や、
食べ物の同皿からのシェア含む一緒の食事、
トイレの共同使用については、
有意な感染リスクの増加は認められませんでした。

要するに、
30分を超える会話は、
たとえマスクをしていてもしない方が良く、
タクシーに乗り合わせるようなことはするべきではなく、
家族は同じ部屋で寝るのは不可ですが、
気をつけていれば食事や洗面、
トイレのリスクはそこまでではなく、
接触感染にはそこまで神経質になることはなさそうだ、
という辺りが現時点での結論に、
上記データからはなるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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