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フルボキサミンの新型コロナウイルス感染症重症化予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
フルボキサミンの新型コロナに対する効果.jpg
JAMA誌に2020年11月12日ウェブ掲載された、
うつ病に使用されるSSRIと呼ばれる薬剤の1つが、
新型コロナウイルス感染症の重症化予防に、
一定の有効性が示唆されたという興味深い報告です。

ただ、症例数が少なく観察期間も少ないことより、
短報と言うべき性質のもので、
まだ結論に飛びつくのは早い、
という点には充分注意が必要です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、
その多くは軽症のまま回復しますが、
一部の事例では急性の臓器不全などを起こして重症化し、
致死的となる場合があります。

こうした重症化は、
病気が発症してから1週間程度してから、
通常8から10日以内で出現することが多く、
それはウイルス自体の増殖にょるより、
身体の免疫系の過剰な反応により、
引き起こされている可能性が高いと考えられています。

従って、抗ウイルス剤の開発と共に、
そうした過剰な免疫反応を抑制するために、
免疫抑制剤の使用などが試みられています。
ただ、その使用のタイミングなどは非常に難しく、
現状一定の有効性が確認されているのは、
ステロイド剤以外にはありません。

2019年のScience誌に、
この点についての興味深い知見が報告されました。
重症感染症の代表である敗血症の実験モデルにおいて、
細胞の小胞体という器官に発現している、
σ1受容体(S1R)が過剰な免疫を調整し抑制するような、
働きを持っていることが明らかにされたのです。
更に興味深いことは、
SSRIと呼ばれる抗うつ剤の1つであるフルボキサミン(商品名ルボックスなど)に、
このS1Rを刺激するような働きがあり、
動物実験のレベルでフルボキサミンの使用により、
ネズミの敗血症の重症化が抑制されることが確認されたのです。

それでは、
フルボキサミンを病初期から使用することにより、
新型コロナウイルス感染症の重症化が予防されるのでしょうか?

今回の臨床試験ではアメリカにおいて、
発症7日以内に診断された新型コロナウイルス感染症患者で、
動脈血酸素飽和度が92%以上で自宅管理、
つまり軽症と判断される事例152例を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
患者にも主治医にも分からないように、
一方は登録時よりフルボキサミンを15日間使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
15日間における重症化の有無を比較検証しています。

重症化というのは、
呼吸状態が悪化して入院などの治療が必要となることです。

フルボキサミンは、
1日目は夕食後のみ50ミリ、
2日目と3日目は1日200ミリ(朝、夕100ミリずつ)に増量し、
4日目以降は1日300ミリ(朝昼夕100ミリずつ)に増量して、
15日間継続します。
副作用や有害事象で増量が困難となった場合は、
増量はしないで維持することになります。

その結果、
109名が最後まで経過観察を行い、
15日間での重症化は、
偽薬群では72名中6名で認められた一方で、
フルボキサミン群では80名中重症化は0名でした。

今回の結果はまだ確定的なものではなく、
今後より事例を増やし、長い経過も見る必要があります。

ただ、通常使用されている薬剤の、
通常の使用量での使用で、
こうした結果が得られたという意義は大きく、
今後の検証の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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