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「さくら」(2020年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
さくら.jpg
西加奈子さんの初期代表作の1つ「さくら」が、
ベテランの矢﨑仁司監督により映画化されました。
主人公の三兄弟には、
吉沢亮さん、北村匠海さん、小松菜奈さんと、
人気者が顔を揃えています。

西加奈子さんの作品は比較的沢山読んでいます。
色々な傾向の作品があるのですが、
最初の「あおい」「さくら」「きいろいぞう」は、
ヒリヒリするようなリアリズムに幻想を織り交ぜた物語を、
饒舌で感情の迸る独特の文体で、
疾走感を持って描いた表現が圧倒的で、
とても感銘を受けました。

「さくら」は家族の崩壊と再生の物語で、
アーヴィングの「ガープの世界」が元ネタと思いますが、
個性的な文体と表現で、
オリジナルとは全く別の肌触りの物語に仕立てています。
1つの家族の物語の中に、
世界が内包されているような大きさがあり、
禁断の愛情から発生した悲劇が、
強く胸を打ちます。

このように原作は間違いなく傑作ですが、
物語自体は突飛な上に、
ある意味グロテスクで悲惨ですし、
その魅力の大きな部分は語り口にあるので、
映像化するのはかなり難しいことが想定されます。

実際に出来上がった映画は、
ほぼ想像の通りと言うのか、
原作への愛情は強く感じられはするものの、
原作の語りの魅力は再現されてはおらず、
それに代わる映像ならではの魅力のようなものは、
あまり感じられる作品にはなっていませんでした。

西加奈子さんの映画化というのは、
ベテラン監督の手をもってしても、
かなり手強いハードルであるようです。

たとえばお兄ちゃんの特殊メイクなど、
とても中途半端ですよね。
やるならもっと徹底してやるべきではないでしょうか。
ラストはさくらが病気になって家族が一丸となるのですが、
これは原作でも「これで終わりなの?」という感じでしたが、
映画ではその弱点がより強調されてしまったようで、
これでは成立していないと感じました。

そんな訳で映画としては不満の残る仕上がりでしたが、
原作の世界がほぼ忠実に再現されているので、
原作のファンであれば、
見てそうガッカリはしないと思います。
逆に原作を未読の方は、
何のこっちゃ、という感じの印象になるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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