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老人ホームの「密」と新型コロナ感染の重症化リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ナーシングホームとコロナ感染.jpg
JAMA Internal Medicine誌に2020年11月9日ウェブ掲載された、
老人ホーム(ナーシングホーム)の密集度と、
新型コロナウイルス感染との関連についての論文です。

高齢者が集団生活をしている老人ホームなどの施設では、
新型コロナウイルス感染症のクラスターがしばしば発生して、
問題となっていることは、
国内外を問わず指摘されているところです。

高齢者がマスクを適切に装着することは困難で、
フロアなどでは密集するリスクが常にあります。
介助者は高齢者にとても密接に関わりますから、
介助者を介した感染も起こりやすいという環境にあります。
おまけに持病をもつ高齢者は免疫力も低下していて、
感染には罹り易く、かつ重症化もしやすいのですから、
これはもう感染リスクが高いのは当然で、
1人の感染がクラスター化するのも必然と、
そう言っても言い過ぎではないように思います。

これまでの疫学データにより、
老人ホームなどの高齢者施設では、
新型コロナウイルスのクラスターが発生し易い、
という点はほぼ間違いがありません。

しかし、一口に老人ホームと言っても、
その居住環境は様々です。

居住環境による感染リスクや重症化リスクの差については、
どう考えれば良いのでしょうか?

今回の研究はカナダのオンタリオ州において、
1つの部屋やトイレを、何人の入居者が使用しているのか、
と言う点を高齢者施設の居住環境の1つの基準として、
その密集度と新型コロナウイルス感染との関連を、
比較検証しています。

オンタリオ州にある、
623の老人ホーム(ナーシングホーム)の入居高齢者、
トータル78607名を対象として、
2020年の3月29日から5月20日の経過観察を施行しました。
居住環境の密集度は、
1つの部屋やトイレを、
2人以上で使用している場合を「密」と判断しています。
密集度を2つに分けた場合、
1.3から1.9が低密度で、2.0から4.0が高密度です。

その結果、
観察期間中に全体の6.6%に当たる5218名が新型コロナウイルスに感染、
1.8%に当たる1452名が死亡されています。

これを施設の密集度で比較すると、
低密度でも罹患率が4.5%に対して、
高密度の罹患率は9.7%で、
死亡率についても低密度が1.3%に対して、
高密度では2.7%の高率になっていました。

このように1つの部屋を2人以上で使用するような環境では、
個室に近い形と比較して、
明確に新型コロナウイルスに感染するリスクも、
死亡するリスクも高くなっていました。

この現象は当たり前のようにも思えますが、
これだけ大規模な検証により、
明確に実証された意義は大きく、
老人ホームや学生寮などでのクラスターを予防するには、
何より相部屋やトイレの共有を避けることが、
一番の対策であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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