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新型コロナウイルス感染症の液性免疫(アイスランドの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療や産業医活動には廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アイスランドの抗体測定.jpg
the New England Journal of Medicine誌に2020年9月1日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症罹患後の抗体価の推移を検証した、
アイスランドの疫学データをまとめた論文です。

ウイルス感染症の回復期には、
通常IgG分画に属する抗体価が上昇し、
ウイルスの抗原に結合してそれを中和する性質を持っているので、
その抗体が一定レベル以上に保たれている間は、
同じウイルスの感染が発症することはありません。

ただ、そのウイルスによって、
感染防御抗体が維持される期間は様々です。

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の場合、
当初は抗体価が上昇すれば、
それは1年くらいは維持されて、
再感染は予防されると考えられていました。

しかし、その後の検証では、
抗体は一旦上昇しても、
2ヶ月程度で陰性化することが、
決して稀ではないということが報告されるなどして、
その意義も含めて抗体についての議論は、
混沌とした状況になっています。

今回の検証はアイスランドにおいて、
30576名の住民の血液中の新型コロナウイルス感染に対する抗体価を、
ウイルス抗原に反応する全てのIgG抗体の測定系2種を含めて、
6種類の測定法で測定し、
その経過を検証しています。
このうち1237名の2102検体は、
遺伝子検査にて新型コロナウイルス感染症と診断されてから、
4ヶ月までに測定され、
感染の濃厚接触者4222名と、
感染者との接触歴のない23452名が含まれています。

その結果、
新型コロナウイルス感染症から回復した1215名のうち、
91.1%に当たる1107名で複数の測定法において抗体価は陽性化していて、
その抗体価は少なくとも4ヶ月はそのまま維持されていました。
濃厚接触者での測定では、
全体の2.3%で抗体価は陽性化していて、
接触歴のない集団での陽性率は0.3%でした。
ここからの推計として、
アイスランドにおいては全人口の0.9%が、
新型コロナウイルスに感染しており、
致死率は0.3%と算出されました。
アイスランドにおいては、
新型コロナウイルス感染者の56%が遺伝子検査で診断されていて、
14%は濃厚接触者で診断には至らず、
30%は接触歴がなく検査も未実施の感染者と推測されました。

このように、
大規模な住民レベルの検証において、
抗体の陽性率は0.9%と低く、
一旦陽性となった抗体は、
少なくとも4ヶ月は維持されることが、
複数の測定系を用いた検証により確認されました。

こうした検証は世界の各地域で行われていますが、
必ずしも一致した傾向を示しているとは言い難く、
今後知見が積み重ねられることにより、
より普遍的な知見が得られることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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