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新型コロナウイルス防御におけるマスクの効果(実際のウイルスとマネキンを用いた実験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
マスクの有効性マネキン.jpg
mSphere誌に2020年10月21日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の予防としての、
マスクの有効性を検証した論文です。

同種の論文は他にも多くあり、
ブログでも何度かご紹介しています。

今回の論文のポイントは、
本物の新型コロナウイルス自体を使用し、
マネキンにマスクを装着して、
人口呼吸器から放出されるウイルス粒子を、
どれだけマスクでブロック出来るのかを検証している、
という点にあります。
実際のウイルス粒子を用いたこうした実験は、
上記文献の著者らによれば今回が初めてです。

東京大学医科学研究所の研究者らによるもので、
メディアでも報道がされました。
詳細については東京医科学研究所のサイトもご覧下さい。
こちらです。
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00042.html

マスクが「新しい日常」においては、
必須の感染対策の柱であることは、
今では世界中で認識されています。

ただ、その感染防御効果は実験法によっても違いがあり、
必ずしも一致した結論が得られているという訳ではありません。

これまでの実験では、
主に生理食塩水を噴霧するような検証でしたが、
今回は感染対策の取られた施設において、
実際の新型コロナウイルス(SARS-CoV)を飛沫にして、
実際の呼気と同じようにマネキンの口から噴霧し、
それがマネキンに装着した各種のマスクによって、
どれだけ予防可能かを比較検証しています。

その結果、
エアロゾル中のウイルス粒子は、
距離が1メートル離れていても、
マネキンに付着が認められていて、
距離は1メートル離れていても、
感染者のウイルス排出量が多ければ、
感染リスクはあることが確認されました。

感染していない側がマスクを装着した場合、
コットンの布マスクではウイルスの取り込みを、
20から40%抑制していました。
N95マスクではウイルスの取り込みは、
80から90%抑制されていました。
ただ、N95マスクをテープで固定して使用しても、
完全にウイルスの取り込みを阻止することは出来ませんでした。

一方で感染者の側がマスクを装着した場合、
コットンのマスクやサージカルマスクで50%の、
ウイルス排出抑制効果が認められ、
N95マスクではより高い効果が確認されました。

こうした知見はほぼ、
これまでの同種の試験と一致しているもので、
マスクの性能は布マスク、サージカルマスク、N95マスク、
という順で高まりますが、
より感染者がマスクをした場合に、
その有効性は高くなっていました。
ただ、お互いにマスクをしていても、
ウイルスの侵入を完全に阻止することは出来ず、
感染リスクを完全にゼロにすることは出来ませんでした。

今回の実験は本物のウイルスを使用している、
という点では実際の感染に近い条件を再現していますが、
ウイルスがマスクから侵入することが、
そのまま感染が成立することではありませんから、
この結果が実際の感染予防効果と、
常に一致するとは限らないことは、
注意の上結果を考える必要があります。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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