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リンゴと慢性疾患リスク(2002年の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
リンゴと慢性疾患.jpg
2002年のAmerican Journal of Clinical Nutrition誌に掲載された、
フラボノイドの健康効果についての論文です。

この古い文献をご紹介するのは、
ちょっと理由あって今リンゴの健康効果を調べていて、
そこで臨床データとして必ず取り上げられている、
有名な文献であったので、
改めて読んでみたのです。

フラボノイドというのはポリフェノールの一種で、
植物由来の色素です。
リンゴやイチゴ、ブドウなどの赤い色の元であるアントシアニンや、
大豆のイソフラボン、お茶のカテキン、
紅茶もテアフラビンなどは全てフラボノイドの仲間です。

フラボノイドは植物が環境から身を守るために、
産生している物質なので、
強い抗酸化作用や抗菌作用、抗炎症作用などを持っています。
個別のフラボノイドには、
たとえば紅茶のテアフラビンなど、
抗菌作用がより強いなどの特徴があります。
元のフラボノイドの性質以外に、
それが腸内細菌などで代謝されたり、
それを加熱するなどして、
変化した物質にまた別の生理活性がある、
というようなこともあります。

リンゴの特徴はそのフラボノイドの含有量と、
食物繊維が豊富であることで、
その両者とも抗酸化作用を持っているので、
トータルに動脈硬化性の疾患や糖尿病、慢性炎症などの、
予防効果が期待されるところです。

ただ、リンゴには多くの成分が含まれていますし、
所謂嗜好品ではなく、
食品の中にも様々な形で含まれる果物なので、
リンゴ自体の健康効果を人間で証明することは、
そうたやすいことではありません。

各種成分の有効性については、
基礎実験や動物実験においては確認されていますが、
人間でのデータは多くはなく、
精度の高いデータは極めて少ないのが実際です。

その数少ない有効性についてのデータの1つが、
今日ご紹介している論文の中にあります。

上記文献はフィンランドにおいて、
62440名の住民を28年観察したという、
長期の大規模な疫学データを二次利用して、
フラボノイドの接種量と病気のリスクや生命予後との関連を、
比較検証しているものです。
この研究については10054名が解析対象となっています。

メインのデータはフラボノイドの種類と、
疾患リスクとの関連をみたものですが、
それに付随してリンゴの接種量と疾患リスクとの関連が数値化されています。
それがこちらです。
リンゴと疾患リスクの図.jpg
リンゴを全く食べない場合と比較して、
1日47グラムを超えるリンゴを食べている人は、
肺癌、気管支喘息、糖尿病、脳塞栓症、
総死亡、虚血性心疾患による死亡の、
それぞれのリスクが有意に低下していました。
その一方で関節リウマチに関しては、
そのリスクは増加の傾向を示していました。

海外のリンゴは日本より小さく、
100から150グラムくらいがスタンダードなので、
このデータは1日3分の1から2分の1の小さなリンゴを食べる、
というくらいに一致しています。

他にも同種のデータはありますが、
僕の確認した範囲ではこのデータが最も明確に、
有効性を示しているもので、
色々なバイアスがありそうなので、
単純にリンゴの効果とはとても言えませんが、
矢張り1日1個のリンゴ(ただし小さなもの)を食べるという習慣は、
色々な意味で健康に良いと、
そう考えて大きな間違いはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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