新型コロナウイルスとスタチンのメタ解析 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
American Journal of Cardiology誌に2020年7月28日掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対するスタチンの影響を解析した、
メタ解析の論文です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、
その治療薬は世界中で研究が進められていますが、
未だ特効薬と言えるような薬剤の開発には至っていません。
完全な新薬ということではなく、
従来から使用されている薬剤が、
新型コロナウイルスに有効なのではないかという推測の元に、
多くの従来からある薬剤の検証も行われています。
その注目されている薬剤の1つがスタチンです。
スタチンというのは、
コレステロール合成酵素の阻害剤で、
最もポピュラーはコレステロール降下剤です。
ロスバスタチン、アトルバスタチンなど多くの種類があり、
コレステロールが高くで薬を飲んでいる人の多くが、
このスタチンを使用しています。
このスタチンにはコレステロールを下げる働きだけではなく、
過剰な炎症を抑えて、
動脈硬化の進行を抑制するような、
抗炎症作用があることも知られています。
たとえば自然免疫の重要な経路を伝達する。
MYD88というシグナル伝達系をスタチンは調整し、
過剰な炎症を抑制するという知見があります。
このMYD88経路は、
新型コロナウイルス感染症の重症化においても、
重要な働きをしているという報告があり、
このことからはスタチンの使用が、
新型コロナウイルス感染症の重症化を、
抑制する効果があることを期待させます。
また新型コロナウイルス感染症の肺病変の重症化には、
肺内のACE2受容体が減少することが、
関連していると想定されていますが、
実験的にはスタチンには、
ACE2受容体を増加させるような効果が確認されています。
これもスタチンが新型コロナウイルス感染症の重症化を、
抑止する可能性を期待させる知見です。
一方でスタチンは組織のLDL受容体を増加させるので、
それが新型コロナウイルスの細胞への感染を、
促進するのでは、という危惧もあります。
前述とは別個の炎症シグナルを活性化させることにより、
むしろサイトカインの過剰な産生を招き、
感染の重症化に繋がるのでは、
という怖れを指摘する研究者もいます。
このように、
スタチンが新型コロナウイルス感染症にどのような影響を与えるのか、
という点について、
理論的な考察は必ずしも一致しているとは言えないのです。
それでは臨床データはどうなのでしょうか?
今回のメタ解析ではこれまでの臨床テータから、
新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡リスクと、
スタチンの使用の有無との関連を検証した論文を、
まとめて解析してその結果を検証しています。
4つの臨床研究に含まれる、
8990名の新型コロナウイルス感染症の患者のデータを、
まとめて解析した結果として、
スタチンの使用は、
新型コロナウイルス感染症の死亡を含む重症化のリスクを、
30%(95%CI: 0.53から0.94)有意に低下させていました。
これは患者を登録して経過をみたような試験ではないので、
その治療効果が確認された訳ではありませんが、
スタチンの使用が新型コロナウイルス感染症の予後を、
改善する可能性があるという知見は興味深く、
今後のより厳密な知見の積み重ねに期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
American Journal of Cardiology誌に2020年7月28日掲載された、
新型コロナウイルス感染症に対するスタチンの影響を解析した、
メタ解析の論文です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、
その治療薬は世界中で研究が進められていますが、
未だ特効薬と言えるような薬剤の開発には至っていません。
完全な新薬ということではなく、
従来から使用されている薬剤が、
新型コロナウイルスに有効なのではないかという推測の元に、
多くの従来からある薬剤の検証も行われています。
その注目されている薬剤の1つがスタチンです。
スタチンというのは、
コレステロール合成酵素の阻害剤で、
最もポピュラーはコレステロール降下剤です。
ロスバスタチン、アトルバスタチンなど多くの種類があり、
コレステロールが高くで薬を飲んでいる人の多くが、
このスタチンを使用しています。
このスタチンにはコレステロールを下げる働きだけではなく、
過剰な炎症を抑えて、
動脈硬化の進行を抑制するような、
抗炎症作用があることも知られています。
たとえば自然免疫の重要な経路を伝達する。
MYD88というシグナル伝達系をスタチンは調整し、
過剰な炎症を抑制するという知見があります。
このMYD88経路は、
新型コロナウイルス感染症の重症化においても、
重要な働きをしているという報告があり、
このことからはスタチンの使用が、
新型コロナウイルス感染症の重症化を、
抑制する効果があることを期待させます。
また新型コロナウイルス感染症の肺病変の重症化には、
肺内のACE2受容体が減少することが、
関連していると想定されていますが、
実験的にはスタチンには、
ACE2受容体を増加させるような効果が確認されています。
これもスタチンが新型コロナウイルス感染症の重症化を、
抑止する可能性を期待させる知見です。
一方でスタチンは組織のLDL受容体を増加させるので、
それが新型コロナウイルスの細胞への感染を、
促進するのでは、という危惧もあります。
前述とは別個の炎症シグナルを活性化させることにより、
むしろサイトカインの過剰な産生を招き、
感染の重症化に繋がるのでは、
という怖れを指摘する研究者もいます。
このように、
スタチンが新型コロナウイルス感染症にどのような影響を与えるのか、
という点について、
理論的な考察は必ずしも一致しているとは言えないのです。
それでは臨床データはどうなのでしょうか?
今回のメタ解析ではこれまでの臨床テータから、
新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡リスクと、
スタチンの使用の有無との関連を検証した論文を、
まとめて解析してその結果を検証しています。
4つの臨床研究に含まれる、
8990名の新型コロナウイルス感染症の患者のデータを、
まとめて解析した結果として、
スタチンの使用は、
新型コロナウイルス感染症の死亡を含む重症化のリスクを、
30%(95%CI: 0.53から0.94)有意に低下させていました。
これは患者を登録して経過をみたような試験ではないので、
その治療効果が確認された訳ではありませんが、
スタチンの使用が新型コロナウイルス感染症の予後を、
改善する可能性があるという知見は興味深く、
今後のより厳密な知見の積み重ねに期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2020-10-05 06:00
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