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新型コロナウイルス死亡事例の剖検所見 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルス死亡事例の剖検所見.jpg
Lancet誌に2020年9月25日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症死亡事例の解剖所見をまとめた論文です。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症は、
当初は重症の肺炎がその主な病変と考えられていましたが、
その後心臓、消化管、腎臓、脳など、
広汎な臓器障害が併発していることが明らかになり、
全身の血管の炎症や血栓形成を伴ったり、
T細胞を主体とした免疫系の過剰な亢進状態が、
その病態で重要な役割を果たしている、
というような仮説も提唱されるようになりました。

ただ、たとえばどのような症状や臓器障害が、
直接的なウイルスの浸潤や増殖によるもので、
どの部分が身体の免疫系の異常によるものなのか、
重症の事例において、
どのくらいの期間ウイルスは細胞内で増殖を続けるのか、
というような点については、
実証的なデータは極めて限られています。

今回の報告はオランダ、アムステルダムの専門施設において、
新型コロナウイルス感染症で死亡した21名の患者を解剖し、
解剖学的また組織学的検証をした結果をまとめたものです。

患者は76%が男性で、
年齢の中間値は68歳です。
症状が出現してから亡くなるまでの期間は、
中間値で22日でした。
新型コロナウイルスの感染細胞を検証した事例では、
肺組織への感染が最も多く、
病状の進行と共に感染細胞は検出されにくくなっていました。
肺以外の組織では、
上気道、心臓、腎臓、消化管の細胞に陽性が見付かりました。

強い炎症所見が、
肺、心臓、肝臓、腎臓、脳に見付かりました。

脳においては、
嗅球と延髄に強い炎症が認められました。
血栓や好中球主体の膿栓が、
肺、心臓、腎臓、肝臓、脾臓、脳に認められ、
そうした変化は病状の後期に認められることが多い、
という特徴がありました。

つまり、
病気の初期には細胞へのウイルスの感染が認められるものの、
病状が進行した状態においては、
血栓症や亢進した炎症が病状の主体になっているという結果です。

矢張り免疫の過剰な反応が、
病状が悪化した状態ではこの病気の本態であるようで、
この点から考えると、
病気の初期には抗ウイルス剤に一定の有用性があっても、
病状が進行した状態では、
免疫を調整したり炎症を抑制するような治療が、
むしろ有用であるように思います。

今後はそうした病態や病期に合わせた、
治療の選択は重要になりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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