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重症新型コロナウイルス感染症における消化器合併症 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの消化器症状.jpg
JAMA誌に2020年9月24日にウェブ掲載されたレターですが、
新型コロナウイルス感染症の重症事例に併発する、
消化器症状を検証した内容です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、
感染拡大の当初は重症肺炎など肺病変が主体と考えられていました。

その後全身の血栓症や凝固系の異常、
心筋炎や心膜炎などの心臓病変など、
肺以外の臓器病変も伴う全身疾患であることが、
徐々に明らかになって来ました。

新型コロナウイルス感染症の肺外病変として、
無視出来ないのは消化器病変です。
軽症の事例でも下痢や吐き気などの症状が多いことは、
これまでにも報告されていますし、
重症の肺炎や呼吸不全を来した事例において、
入院中に腸閉塞や消化管出血、虚血性腸炎、
急性膵炎などの消化器系の合併症を、
しばしば合併していることが明らかになっています。

ただ、それが新型コロナウイルス感染症の特徴であるのか、
それとも重症の肺疾患に伴う一般的な症状であるのか、
という点については明確なことは分かっていません。

そこで今回の研究では、
アメリカ、マサチューセッツの単独施設において、
新型コロナウイルス感染症と診断され、
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で集中治療室で治療を受けた242名を、
新型コロナウイルス感染症以外の原因で、
2018年から2019年にARDSで同様に集中治療室で治療を受けた244名と、
年齢など他の条件をマッチングさせて比較検証しています。
実際にマッチングして比較された事例は、
各群で92名ずつです。

その結果、
新型コロナウイルス感染症群では、
74%が消化器疾患を合併していたのに対して、
新型コロナウイルス感染症以外のARDS群では37%で、
新型コロナウイルス感染症のARDS事例では、
それ以外の原因と比較して、
消化器疾患の合併が2.33倍(95%CI: 1.52から3.63)、
有意に増加していました。

このように、
新型コロナウイルス感染症の重症事例においては、
腸閉塞や虚血性腸炎などの消化器疾患の合併が、
明らかに多く、
それが予後にも影響している可能性が示唆されました。

腸管には、
新型コロナウイルスの感染に必要なACE2受容体が分布していて、
それが消化器病変に繋がっている可能性がある一方、
重症の肺炎などの際にはモルヒネなどの麻薬が使用されるケースも多く、
それが腸管の動きの低下に繋がっていて、
腸閉塞などのリスクを高めたという可能性も否定は出来ません。

今後そのメカニズムなどについては検証が必要ですが、
重症の新型コロナウイルス感染症で、
消化器系合併症が多いことはほぼ間違いがなく、
その管理において注意が必要と考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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