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「宇宙でいちばんあかるい屋根」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも須田医師が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
宇宙でいちばんあかるい屋根.jpg
2003年に野中ともそさんにより書かれた、
ジュブナイル小説を、
「新聞記者」の藤井道人監督が、
極めて繊細かつ格調高く映画化しました。

まず原作を読んでから映画を観ました。

今どきベタなファンタジーという感じで、
予告を見た時点ではあまり見たいという気がしなかったのですが、
原作を読むとなかなか奥行きのある、
素敵な作品だったので、
これをどのように映像化したのかしら、
と興味が沸いて映画館に足を運びました。

なかなか良かったですよ。
映画館で観られて正解でした。

これね、良い意味でハリウッド映画みたいなんですよ。

スピルバーグかゼメキスが撮った、
アメリカのファミリー層向けの、
ハートウォーミングファンタジーという感じですね。
世界マーケットを狙って、
多分意図的にそうした作りにしているんですね。
パクリと言えばパクリなのですが、
世界水準の映画を作ろう、という、
とても前向きな姿勢を感じます。

画面が物凄く綺麗でしょ。
シネスコの画面を実に精緻に使っていて、
とても画角が美しくて完成度が高いですね。
監督自らが手掛けた台本が非常に完成度高く出来ていて、
相当時間を掛けて練って作ったのだろうな、
ということが推測されます。

原作をとてもリスペクトしていて、
愛していることが伝わって来ます。
日差しや空の描写とか、
ああ、これは原作のこの文章を表現したのだな、
とちゃんと理解出来るように作られています。
それでいて、ある程度原作を変えているのですが、
それもいちいち、なるほど、
という感じの変え方なのですね。
全てが同感出来るという訳ではないのですが、
それでも共感は出来る改変になっていたと思います。

これ、たとえば大林宜彦監督も、
好きそうな原作でしょ。
彼が監督したら「さびしんぼう」みたいになったのかな、
というように想像出来ますね。
でもそうなったら、
もっとボロボロ泣ける映画になった一方で、
個人的遊びの多い、
趣味的で日本人にしか分からないような、
そんな映画になったという気がします。
藤井監督はもっと抑制的で、
全体の完成度を重要視しているんですね。
どちらがいいとは言い切れないのですが、
意外にこうした才能は、
あまり日本映画にはこれまでなかった、
という気もします。
編集もカット割りも奇をてらわずに滑らかで、
とても堂々としていると思います。

キャストは清原果耶さん、伊藤健太郎さんという、
フレッシュなコンビが素晴らしく、
現在おそらくベストの組み合わせです。
桃井かおりさんと吉岡秀隆さんの芝居については、
好みが分かれるところだと思います。
桃井さんについては雰囲気は抜群と思うのですが、
おぼつかない感じの台詞回しは、
映画のリズムを崩していたようにも思います。
吉岡さんのかなり癖のある役作りは、
原作を先に読んでいると、
何を表現しようとしているのか、
という点は理解出来るのですが、
こちらも他のキャストの自然な雰囲気を、
1人で壊している、というきらいはありました。

勿論映画を先に観てもいいのですが、
この作品の場合原作を知ってこそ、
という演出が多いので、
どちらかと言えば原作を読んでからの鑑賞をお勧めします。

いずれにしても、
藤井道人監督の力量の幅を如実に示した、
原作の魅力を全て絞り出したような愛すべき映画で、
迷われていれば是非にとお勧めします。

控え目に言って悪くないです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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