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食後高血糖は何故動脈硬化を進行させるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
食後高血糖と動脈硬化リスク.jpg
Circulation Research誌に2020年9月11日掲載された、
糖尿病における動脈硬化の進行メカニズムについての論文です。

糖尿病では動脈硬化が進行して、
心筋梗塞や脳卒中の原因となることは、
広く知られている事実です。

ただ、そのメカニズムについては、
それほど明確に分かっているという訳ではありません。

血糖値を改善して正常に近づければ、
動脈硬化の進行も予防出来るという考え方があり、
そのために世界中で臨床試験が行われたのですが、
網膜症などの小血管の合併症については、
予防効果が確認されたものの、
動脈硬化性疾患についての予防効果は、
正常に近いレベルにはなりませんでした。

こうした臨床試験は血糖コントロールの指標として、
HbA1cを用いていることが多いのですが、
HbA1cは食後血糖のみが上昇しているような、
間欠的で一時的な血糖上昇のみの状態では、
異常値を示さないことが多く、
その一方でそうした間欠的な血糖上昇でも、
動脈硬化は進行するというデータが存在しています。

それでは、
何故HbA1cが上昇しないような一時的な血糖上昇でも、
動脈硬化は進行するのでしょうか?

今回の研究ではマウスを使用した動物実験によって、
食後血糖の上昇のみで、
身体に起こる変化を検証しています。

その結果、
食後のみの間欠的血糖上昇により、
骨髄での造血が刺激されて特定の単核球の産生が増加。
それが動脈硬化巣(プラーク)に侵入して、
血管の炎症から動脈硬化を進行させることが確認されました。

それを図示したものがこちらです。
食後高血糖と動脈硬化リスクの図.jpg

今回の検証からメカニズムの面からも、
食後血糖の一過性の上昇が、
動脈硬化を進行させることが確認されました。

これが事実であるとすると、
糖尿病における動脈硬化の病気の予防のためには、
HbA1cの管理のみでは充分ではなく、
別個に食後の血糖上昇を評価して、
それに対する有効な対策を、
講じないといけないということになります。

ただ、食後血糖を下げるとされる薬は、
現在でも複数存在していますが、
その使用により明確に動脈硬化の進行が予防された、
というような信頼のおける研究結果は存在していません。

今後生活改善を含めて、
一時的血糖上昇の予防を目的とした、
精度の高い臨床試験の実施が望まれますし、
その結果に基づいた治療法の確立が、
糖尿病患者のトータルな予後改善のためには、
急務であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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