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シェーファー「わたしの耳」(マギー演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
わたしの耳.jpg
新型コロナはまだ東京では収束とはとても言えませんが、
その一方で舞台劇の上演も少しずつ開始されています。

シス・カンパニーが、
「エクウス」や「アマデウス」のピーター・シェーファーの初期作を、
「わたしの耳」と「あなたの目」という2本立てで、
連続上演しています。

その「わたしの耳」の上演に足を運びました。

これは1時間25分程度の短い1幕劇の3人芝居で、
クラシックマニアの孤独な青年と社交的な会社の同僚、
正体不明の少女との1夜の交流を描いた、
苦くて痛い小品です。

作品は如何にもイギリス戯曲という感じで、
情報が共有されない人間関係の切なさを描いています。
ただまあ、極めて地味な内容なので、
日本で上演するには娯楽作としてはちょっとなあ、
という感じはします。
これでお金を払って劇場に行って、
観て、それで満足するかと言うと、
そこはちょっと難しいかな、と思います。

演出はマギーさんで、
上演台本にもかかわっています。
ケラさんの一連のお仕事のように、
このお芝居を日本でも笑えるような喜劇にしよう、
という企画側の意図が感じられる起用です。
ただ、実際には堅実な演出で作品の意図自体は、
しっかりと客席に伝わる仕上がりになっていましたが、
笑えるかと言うと、
特にそうした内容ではありませんでした。

ソーシャルディスタンシングを意識した演出になっていて、
不自然でない範囲で役者同士はなるべく距離を取り、
その距離が内容にも反映するように工夫がされていました。
ただ、医療者としての立場から言うと、
格別それで感染リスクが減少しているとは言えないので、
役者個人の健康管理と、日常生活上の注意、
症状が少しでもあれば申告して上演を中止する、
というような対応が重要で、
舞台上での位置関係に留意することは、
あまり本質的ではないように思いました。
マスクをせずに同じ舞台に立って芝居をしていれば、
気を付けていても感染するときは感染する、
というように思えるからです。

キャストは孤独な青年にウエンツ瑛士さん、
社交的な男に岩崎う大さん、少女に趣里さん、という布陣で、
中ではウエンツさんが、
イギリスの孤独な青年を違和感なく、
かつ暗くなりすぎることなく演じていて出色でした。
色々な意味でこうした翻訳劇にはもってこいの逸材だと思います。
岩崎さんは軽妙な反応や動きなどは悪くないのですが、
少し長めの台詞になると言葉が流れてしまって、
聞きづらくなってしまうきらいがあり、
舞台役者としての技量には疑問が残りました。
趣里さんはもうベテランと言って良い舞台経験で、
安定感のあるお芝居でしたが、
彼女のやりようによっては、
もっと盛り上がる作品にもなったと思うので、
アンサンブル的には疑問は残りました。
何故冴えない青年のいきなりのデートの誘いに、
初対面でOKしたのか、というのが、
この物語の一番の謎だと思うので、
そこにもっとフォーカスを当てた役作りが、
あっても良かったように思いますし、
演技の振幅ももっと大きくなった方が、
つまり多面性を表現した方が、
良かったように思いました。

総じて堅実な演技と演出で、
悪くないお芝居でしたが、
もっと面白くする方法はあったのではないかな、
というようには感じました。

連続して上演されるのは、
「あなたの目」で、
これは映画「フォローミー」の原作ですね。
こっちの方も観たいな、と後から思ったのですが、
時すでに遅しでチケットは完売でした。
とても残念です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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