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新型コロナウイルス感染症による糖尿病の超過死亡(イギリスの大規模データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
イギリスのコロナと糖尿病.jpg
Lancet Diabetes & Endocrinology誌に2020年8月13日ウェブ掲載された、
イギリスでの大規模データを解析した、
新型コロナウイルス感染症と糖尿病患者の予後についての論文です。

糖尿病が新型コロナウイルス感染症の重症化の、
大きな予測因子であることは、
これまでの多くの疫学データの解析より、
ほぼ明らかとなった知見です。

上記文献に引用されているデータによればイギリスにおいて、
糖尿病のない患者と比較して糖尿病の患者では、
1型糖尿病で3.51倍(95%CI:3.16から3.90)、
2型糖尿病で2.03倍(95%CI:1.97から2.09)、
有意に病院での死亡リスクが高かったと報告されています。

ただ、こうしたデータでは高血圧や心臓病など、
他の併発疾患の影響などが考慮されていません。

今回の研究はイギリスのプライマリケアにおける、
登録された全てのデータを解析したという非常に大規模なもので、
1型糖尿病の患者264390名と、
2型糖尿病の患者2874020名が対象となっています。

まずこちらをご覧下さい。
イギリスのコロナと糖尿病の図.jpg
上の図が1型糖尿病で下の図が2型糖尿病ですが、
2020年の1から19週の、
1週間辺りの死亡数の推移を示しているものです。
新型コロナウイルス感染症の流行と共に、
死亡者数が例年と比較して、
劇的に増加していることが分かります。

2020年の2月16日から5月11日の間に、
1604名の1型糖尿病の患者と36291名の2型糖尿病の患者が死亡し、
そのうち1型糖尿病の464名と2型糖尿病の10525名は、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡と認定されています。
更にそのうちの289名と5833名は、
心血管疾患もしくは慢性腎臓病を併発していました。

血糖コントールの指標であるHbA1cが、
比較的良好とされる6.5から7.0%と比較して、
コントロール不良の10.0%以上であると、
1型糖尿病で2.23倍(95%CI:1.50から3.30)、
2型糖尿病で1.61倍(95%CI:1.47から1.77)、
それぞれ新型コロナウイルス感染症における死亡リスクが増加していました。

BMIと新型コロナウイルス感染症における死亡リスクは、
1型と2型糖尿病双方において、
25.0から29.9が一番低く、20.0未満でも40.0以上でも、
いずれも有意に死亡リスクは増加していました。

このように、
単純に心血管疾患を合併しているから、
ということではなく、
糖尿病の存在自体が、
新型コロナウイルス感染症の死亡リスクを、
上昇させていることは間違いがないようです。
血糖コントロールの改善と高度の肥満の予防は、
そのリスクの低下に結び付く可能性があるので、
現状はその点に留意することが、
新型コロナウイルス感染症についての、
最善の予防法と言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日は皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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