SSブログ

男性ホルモン濃度と気管支喘息リスク(イギリス大規模データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
テストステロンと喘息.jpg
Thorax誌に2020年8月31日ウェブ掲載された、
気管支喘息のリスクと男性ホルモンとの関連についての論文です。

気管支喘息は小児では女児より男児に多いのですが、
成人では男性より女性に多いという特徴があります。

女性ホルモンであるエストロゲンは、
抗炎症作用を持つとされていますが、
その一方でエストロゲンやプロゲステロンの高値で、
喘息の原因であるアレルギー性の炎症が活発化する、
というような知見もあります。
一方で男性ホルモンのテストステロンや、
その誘導体である5αDHTは、
自然免疫と獲得免疫の双方において、
免疫系を抑制して炎症を抑える、
というような報告があります。

ただ、これまでの観察研究などの知見では、
血液のテストステロンの高値が、
明確に喘息リスクの低下に結び付いている、
というような結果は得られていませんでした。

今回のデータは大規模医療データとして有名な、
イギリスのUKバイオバンクのデータを活用して、
年齢が40から69歳の256419名を対象に、
血液のテストステロン濃度と、
喘息の発症リスクや喘息患者の予後との関連を比較検証しています。

その結果、
血液のテストステロン濃度を4分割して解析すると、
最も濃度の高い群は低い群と比較して、
男性で13%(95%CI:0.82から0.91)、
女性で33%(95%CI: 0.64から0.71)、
経過中の気管支喘息発症リスクが有意に低下していました。

要するにテストステロンに喘息の予防効果のあることを、
示唆させる結果です。

次に喘息患者の予後を解析すると、
男性の喘息患者は血液のテストステロン濃度が高いほど、
その呼吸機能の数値も高く、
女性の喘息患者では血液のテストステロン濃度が高いほど、
急性増悪で入院になるリスクも低下していました。

このように、
血液のテストステロン濃度は、
男女ともに喘息の発症に予防的に働いていて、
その予後についても改善する可能性のあることが、
これまでで最も大規模なデータにより確認されました。

一部に男性ホルモンのサプリメントが、
喘息の予後を改善したとするデータもあり、
今後その治療や予防目的の使用も含めて、
男性ホルモンやその誘導体の、
新たな使用が検討されるようになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0) 

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。