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血液の脂質濃度と肺炎リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
HDLコレステロールと肺炎リスク.jpg
the American Journal of Medicine誌に、
2020年8月15日ウェブ掲載された、
血液の脂質濃度と将来の肺炎リスクとの関連についての論文です。

コレステロールや中性脂肪などの血液の脂質濃度が、
動脈硬化や心血管疾患のリスクと関連していることは、
今では一般の方にもよく知られている事実です。

ただ、血液の脂質濃度は動脈硬化ばかりでなく、
身体の免疫系にも大きな影響を与えていることが、
最近注目される知見となっています。

細菌感染やウイルス感染においては、
血液の脂質バランスに変化を与え、
感染の重症度とその脂質の変化との間にも関連がある、
という報告が複数認められています。

急性感染症の患者のデータでは、
善玉コレステロールと称されるHDLコレステロールの低値と、
総コレステロール値の低値、
中性脂肪の高値が認められるというデータもあります。

ただ、こうしたデータは主に、
感染症の罹患時に血液の脂質を測定しているものです。
しかし、もし脂質の異常が免疫系に影響を与えて、
それが感染症のリスクに結び付いているものだとすれば、
そこには一定のタイムラグがある筈です。

そこで今回の研究では、
アメリカの動脈硬化のリスク因子を検証した、
疫学研究のデータを活用して、
登録の時点での脂質濃度とその後最初に肺炎で入院するまでに時間から、
脂質濃度と肺炎リスクとの関連を検証しています。
中間値で21.5年という長期の経過観察がなされています。

その結果、
中性脂肪が高値であるほど、
HDLコレステロール濃度が低値であるほど、
入院を要する肺炎のリスクが高くなることが確認されました。
中性脂肪については10mg/dL上昇する毎に2%(95%CI:1.02から1.03)、
HDLコレステロールについては10%(95%CI:0.87から0.92)、
有意に肺炎のリスクは増加、もしくは減少していました。
一方で総コレステロールとLDLコレステロールには、
そうした関連は認められませんでした。

今回の検証では中性脂肪の高値とHDLコレステロールの低値が、
その後の肺炎リスクと関連のあることが確認されました。
これが原因と結果の関係であるのか、
それとも何か別個の原因を介しての関係であるのかは、
まだ分かりませんが、
脂質異常症は動脈硬化性疾患のみならず、
肺炎のような感染症との関連があるという今回の知見は大変興味深く、
そのメカニズムと脂質の改善による肺炎の予防効果を含めて、
今後の検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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