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高齢者におけるスタチン使用の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの高齢者使用の効果.jpg
2020年のJAMA誌に掲載された、
コレステロール降下剤スタチンの、
高齢者での有効性についての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
広く使用されている動脈硬化性疾患の予防薬です。

心血管疾患(主に心筋梗塞)を一旦起こした場合の、
再発予防(二次予防)としての効果は、
75歳以上の年齢においてもほぼ確認されていますが、
まだ心血管疾患を起こしていない場合の、
起こさないための予防(一次予防)効果は、
75歳以上ではトータルには明確には確認されていません。

これは多くの臨床試験において、
年齢が75歳未満に設定されていることが多く、
それより上の年齢層ではデータは少ないのが主な原因ですが、
実際には世界的に高齢化は進行し、
むしろ75歳以上がスタチン治療の主体と言っても、
誤りではないのですから、
この点を明確にすることが急務であるのは間違いがありません。

今回の研究は、
これまでにもよく使用されている、
アメリカの退役軍人の医療データを活用して、
登録時に心血管疾患がなく、
スタチンも使用はしていない75歳以上の326981名を対象として、
観察期間中のスタチンの開始と、
その後の生命予後との関連を比較検証しています。

その結果、
17.5%に当たる57178名がスタチンを開始しており、
その後平均観察期間6.8年において、
スタチン未使用と比較して、
スタチン使用高齢者は、
総死亡のリスクが25%(95%CI:0.74から0.76)、
心血管疾患による死亡のリスクが20%(95%CI:0.78から0.81)、
心血管疾患の発症リスクが8%(95%CI:0.91から0.94)、
それぞれ有意に低下していました。

これは別個のデータを後から解析したものなので、
データの質としてはそれほど高いものではありませんが、
75歳以上から開始した一次予防目的のスタチンの使用にも、
一定の生命予後改善効果が示された、
という知見は意義のあるもので、
今後より精度の高い臨床試験において、
高齢者のスタチンの使用の可否が、
明確になることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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