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新型コロナウイルス感染に伴う低カリウム血症 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カリウムと新型コロナウイルス.jpg
JAMA Network Open誌に2020年7月11日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の合併症としての、
低カリウム血症についての論文です。

新型コロナウイルス(SARS-CoV2)は、
気道などのACE2を受容体として感染しますが、
それによりACE2はその本来の働きを低下させます。

ACE2は、
レニン・アンジオテンシン系に抑制的に働く酵素で、
その働きにより血圧は低下しますが、
ACE2が抑えられることにより、
結果としてレニン・アンジオテンシン系が活性化するので、
ナトリウムは蓄積して血圧は上昇、
カリウムは排泄されて低カリウム血症が生じます。

このことから、
新型コロナウイルスに感染して、
ACE2の活性が低下すると、
結果として低カリウム血症になる、
という可能性が示唆されるのです。

高度の低カリウム血症になると、
筋脱力や重症の不整脈などが生じ、
それが新型コロナウイルス感染による身体のダメージを、
より重いものにするという可能性も考えられます。

それでは、
実際に新型コロナウイルス感染症では、
低カリウム血症が合併症として生じているのでしょうか?

今回の研究では、
中国で武漢市と共に一時期感染が拡大した温州市の2つの病院で、
新型コロナウイルス感染症と診断されて入院した175名の患者を、
低カリウム血症なし(血液カリウム濃度が3.5mEq/Lより高い)、
軽度低カリウム血症(血液カリウム濃度が3から3.5mEq/L)、
高度低カリウム血症(血液カリウム濃度が3mEq/L未満)の3群に分け、
その頻度と特徴を比較しています。

その結果、
カリウム値が正常であったのは全体の46%で、
軽度低カリウム血症が37%、高度低カリウム血症が18%で、
全体の半数以上が低カリウム血症を呈していました。

高度の低カリウム血症の患者は、
そうでない患者と比較して、
炎症反応や体温、筋系酵素の上昇などがより高く、
感染の重症化と関連している可能性が示唆されました。
カリウムの補充を行った患者では、
比較的その反応は良好で、
特に軽度の低カリウム血症においては、
速やかにカリウム値は正常化していました。

今回の検証において、
新型コロナウイルス感染症の患者の多くにおいて、
低カリウム血症が認められ、
感染の重症度と低カリウム血症の重症度との間にも、
一定の関連が認められました。

ただ、今回のデータからは、
低カリウム血症が感染重症化の要因の1つであるのか、
というような点は明らかではなく、
カリウムの補正が予後の改善に結び付くかどうかも、
明らかではありません。

この問題は今後検証が必要であると思いますし、
カリウムの補充の有効性についても、
今後の知見を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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