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アジスロマイシンと死亡リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アジスロマイシンの死亡リスク増加.jpg
JAMA Network Open誌に2020年6月17日ウェブ公開された、
広く使用されている抗菌剤の、
短期的な死亡リスク増加についての論文です。

アジスロマイシン(商品名ジスロマックなど)は、
マクロライド系の抗菌薬の1つで、
同じマクロライドのクラリスロマイシンと比較すると、
肝臓の薬物代謝酵素の影響などを受けにくいため、
併用薬剤の制限が少ない、
1日に1回や場合によって1回のみの使用で良い、
という利便性があり、
上記論文ではアメリカで最も処方されている抗菌薬の1つ、
という記載がありますが、
アメリカのみならず日本においても、
広く使用されている抗菌薬の1つです。

しかし、2012年に発表された論文において、
アジスロマイシンの使用が心臓由来の突然死のリスクを増加させる、
という結果が報告されて物議をかもしました。
マクロライド系抗菌剤では、
心電図におけるQT延長という変化が起こり易く、
それが重症の不整脈の引き金となる可能性が示唆されたのです。

ただ、その後に発表された6つの疫学研究の結果では、
そのうちの3つの研究では心疾患やその死亡と、
アジスロマイシンの使用との間に、
一定の関連が認められましたが、
残りの3つの研究では無関係という結果でした。

つまり、この問題はまだ解決されているとは言えないのです。

そこで今回の研究では、
アメリカの大手健康保険会社である、
カイザー・パーマネント社の医療データを活用して、
カリフォルニア州において年齢がから30から74歳で、
アジスロマイシンを使用した1736976件と、
ペニシリンのアモキシシリンを使用した6087705件を、
比較検証しています。

影響する因子を補正した結果として、
アジスロマイシン使用群では、
投与後5日以内の心血管疾患による死亡リスクが、
アモキシシリン群に比較して、
1.82倍(95%CI: 1.23から2.67)有意に増加していました。
ただ、以前報告のある心臓突然死については、
有意な増加は認められませんでした。
また、使用後6日から10日後では、
心血管疾患による死亡リスクの有意な増加は認められませんでした。

アジスロマイシンの使用はまた、
投与5日以内の心血管疾患以外の原因による死亡リスクも、
アモキシシリンに比較して、
2.17倍(95%CI: 1.44から3.26)、
総死亡のリスクも2.00倍(95%CI: 1.51から2.63)、
それぞれ有意に増加させていました。

このように今回の大規模な検証においても、
アジスロマイシンの使用はペニシリンと比較して、
心血管疾患疾患による死亡リスクを増加させていました。
今回の研究は実際の処方データを後から解析したものなので、
アジスロマイシンが原因で死亡リスクの増加が起こっている、
というように言い切れるものではないことに注意が必要ですが、
特に心疾患を持っていたり、そのリスクの高いような患者さんに対する、
アジスロマイシンの使用については、
今後はより慎重に考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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