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「翔んだカップル」(相米慎二監督映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
翔んだカップル.jpg
相米慎二監督のデビュー作で薬師丸ひろ子さんが主演した、
「翔んだカップル」です。

相米慎二監督の映画は何本か観ていますが、
ちょっと文学っぽい感じになって以降より、
僕は最初の薬師丸ひろ子さんのアイドル映画2本が好きです。

僕自身も丁度屈折した青春という時期でしたから、
作品の底流に流れるものに、
素直に惹かれるような思いがあったのです。

2本の中では以前は「翔んだカップル」より、
「セーラー服と機関銃」の方が好きだったのですが、
今観るとアングラチックなところがね、
ちょっとなあ、やるならもっと徹底して欲しかったし、
中途半端な感じはありますね。
特に三國連太郎の最後とか、
どうなの? あんな尻すぼみでいいの?
あれ原作とは全く違う設定なんですよね。
好きでやったなら、もっとやりきってよ、
という感じがしました。
風祭ゆきさんがとても良かったのにね、
その辺が凄く残念。

「翔んだカップル」はね、
正直そう上出来な映画じゃないんですよね。
北野武さんの「その男凶暴につき」と同じように、
色々実験的なことをやっていながら、
まだ自分のものになりきっていない、
という稚拙な部分があります。

ただ、不思議と魅力的な映画です。

前半は正直如何にも漫画原作の青春物、
という感じです。
それもやや稚拙で台詞も聞き取れないところが多いのです。

それが後半になってくると、
心の深い部分に食い入って来るようなニュアンスが出て来ます。

夢オチを交えながら重層的な描写で、
次第に近づいて来る主人公2人の距離感が、
胸騒ぎを覚えるほど繊細で魅力的ですし、
2人の仲を引き裂くクラスメート2人の造形の、
屈折した陰影も心に残ります。
主人公の同棲が解消する場面の夕景の美しさと、
切なさがとても良いですし、
ラスト前の校庭の人間モグラ叩きの場面は、
それまでの全てを集約して、
何と言うのか、1つの青春の終わりを感じさせる、
極めつけの名場面でした。

後の映画のような超長回しこそありませんが、
薬師丸ひろ子さんを乗せた自転車が坂を走り下りて、
段ボールの山に激突するまでの1カットは、
アイドルに無茶をさせているなあ、と思いますし、
他にもボクシングシーンなど、
多くの普通はカットを割る場面が、
ワンカットで撮影されています。
わざわざ上下を反転させた場面など、
監督らしい遊びも随所に見られます。

キャストは何と言っても薬師丸ひろ子さんで、
その魅力が存分に発揮され、
監督も非常に多彩な表現を駆使して、
絶妙の瞬間を切り取っています。
アップの表情変化など、
かなりあざといのですが素敵です。

そんな訳で僕にとっては青春の1本で、
結構今観ても後半は悪くないなと思いました。
今の映画やドラマではほぼ絶滅した、
生身の手作り感に溢れた愛すべき映画です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい、

石原がお送りしました。
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