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「隠された記憶」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。
今日も1日家に籠もっている予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
隠された記憶.jpg
ヨーロッパの鬼才ミヒャエル・ハネケ監督が、
フランスで2005年に撮ったスリラーで、
カンヌ国際映画祭の監督賞に輝くなど、
世界的に評価された映画ですが、
「結局どういう話なの?」と困惑必死の問題作です。

主人公の人気テレビキャスターのところに、
自分の家を据え置きカメラで数時間録画した、
謎のビデオが送りつけられて来ます。
その後も同様のビデオが次々と送りつけられ、
少年や鶏が血を吐く光景を描いた不気味な子供の絵や、
主人公の生家の画像、
そして有るアパートの風景などが送られて来ます。
どうやら犯人は、
主人公をそのアパートに秘められた、
彼自身の過去に繋がる何かに、
誘導しようとしているようなのです。

主人公はテレビの世界の成功者ですが、
妻は仕事先の友人と不倫関係にあり、
息子は両親に心を開こうとはしません。
仕事自体も「大衆の人気」という、
あやふやなものに左右されていて、
仕事先にビデオを送りつけられると、
それもダメージになってしまいます。

主人公は孤立無援の中で、
見えない脅迫者に対峙し、
自分の過去の罪に向き合うことになるのです。

あらすじだけ読むと心理スリラーのような雰囲気です。
ただ、主人公はかなり独善的な性格に描かれているので、
観ている側としては、
とても主人公に肩入れするような気分にはなれません。
ワンカットが多く台詞のない余白が多く、
音楽もなく淡々と、
極めてスローなペースで物語は展開され、
次第に睡魔に襲われそうになります。

と、いきなり全体の3分の2くらいのところで、
唐突で非常にショッキングな場面が出現します。
このスローテンポでまさか、と思うので、
これは相当に驚きます。

ただ、その衝撃の場面の後も、
同じように淡々と物語は進み、
結局ビデオテープを送りつけた犯人は不明のまま、
尻切れトンボ的に映画は終わってしまいます。

この映画が物議をかもすのは、
ポスターの画像にもあるように、
「衝撃のラスト」という文言が宣伝に使われていたからです。

衝撃の場面はあるのですが、
中程でラストではないので、
これを「衝撃のラスト」と言うのは無理があります。
実際のラストは主人公の子供が通う学校の出入り口を、
固定カメラでただ長回ししただけの、
衝撃とは真逆のカットなので、
観客は尚更戸惑うことになるのです。

実はラストシーンでさりげなく、
それまで関係が不明確であった2人の人物が、
話し合っているのですが、
それで2人が犯人ということにはなりませんし、
それが衝撃と言えるのでしょうか?
分かっても意味は分かりません。

これね、宣伝がおかしいんですよね。
正確には「中程の衝撃の場面と予想を裏切るラスト」
という感じだと思います。

ハネケ監督はインタビューで、
「この映画はやましさが主題で、
ビデオを誰が送ったのかは、
大きな問題ではない」
というようなニュアンスの発言をしています。

その意味では主人公のやましさの正体については、
劇中で十全に語られているので、
監督の意図通りに作られた作品だ、
と言って間違いはないのです。

特に優れているのは、
映画後半にあるエレベーターを使った長いワンカットシーンで、
監督もインタビューで
「撮るのに苦労したが、良い場面になった」
と語っている通り、
とても技巧的で完成度が高く、
作品のテーマを圧縮して示した名シーンでした。
でもね、監督に言われないと、
ここがポイント、なんてちょっと分からないですね。

個人的な推測としては、
おそらくラストの意味は世代を超えた「和解」という趣旨で、
過去の立場の違う人間の対立の悲劇は、
結局その世代では解決せず、
新たな悲劇を生んだだけに終わったのですが、
その隠された真実が明らかにされたことにより、
その次の世代においては、
和解の種が播かれた、
ということではないでしょうか?

意地悪監督がひねりにひねった心理スリラーで、
面白いと素直に言えるような作品ではないのですが、
観た後で強く心に刻まれる映画であることは確かで、
心身ともに体力のある時にご覧下さい。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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