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「チャイナタウン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
外来は須田医師が午前午後とも担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
と言っても、今は映画も演劇も何も見には行けないので、
僕の大好きな映画の感想などお届けします。

今日はこちら。
チャイナタウン.jpg
ロマン・ポランスキー監督の傑作ハードボイルド、
「チャイナタウン」です。

これは1974年のアメリカ映画で、
日本では1975年に公開されました。

ポランスキーは、
その前の日本公開作「マクベス」は映画館で観たんですよね。
小学生が観るような映画ではなかったのですが、
ついつい観てしまって、
未だに強烈な印象が残っています。

その時に「チャイナタウン」の予告編が流れたので、
予告編自体は映画館で観たのですが、
本編は結局観られませんでした。

テレビで放映された時に初めて観て、
それからDVDで観て、WOWOWで観て、
という感じで何度も観ました。
そしてまた昨日、録画したWOWOW版で、
またついつい観てしまいました。

初見の感想としてはポランスキーにしては淡泊な印象で、
お話も描写もどぎついところはなくて、
少し物足りなく感じたんですよね。
でも、これはジワジワ来る映画なんですね。
何て言うのかな、1つのパターンをやっているんですね、
私立探偵と運命の美女と繰り返されるチャイナタウンの悲劇でしょ、
1940年代に花開いたハリウッド製フィルムノワールの、
極めて定番のストーリーを、
1937年を舞台にして、
ノスタルジックに再現しているんですね。
しかもかつてのノワールの名監督であった、
ジョン・ヒューストンが登場して悪のボスを演じています。
これはもう意図的な趣向なんですね。

それだけだと、
ただのノスタルジーになってしまうのですが、
この映画はそのかつてのハリウッド映画の世界を、
もう失われてしまった世界の話として、
手の届かないユートピアのように描いているのです。

この映画のポランスキーは、
極力自分の色を出さないようにしながら、
ある種「完璧な映画」を目指して、
そのディテールに凝りまくっています。
キャメラワーク、小道具、美術、構図、音楽、
全てが完璧を目指して高いレベルで磨き上げられています。

そして、
主役のジャック・ニコルソンとフェイ・ダナウェイが、
2人の代表作と言っても過言ではない、
素晴らしく雰囲気のある芝居で盛り上げます。

色彩設計の見事さも特筆ものです。
アンバー(夕暮れ色)と夜の青を基調に構成されていて、
特に夕暮れの色が独特なんですよね。
ジャック・ニコルソン演じる私立探偵が、
水道局の官吏の男の浮気調査をするのが発端なのですが、
その官吏の男が、
夕暮れに干上がった河を歩いて行くんです。
それを遠方からニコルソンが双眼鏡で眺めるんですが、
そのさりげない1カットだけで、
2人の人間の孤独感が浮き彫りにされて、
夕暮れの色が2人の孤独を繋ぐように見えるのです。

こういうさりげない叙情のようなもの、
1カットで人生の断面を切り取り、
観る人の心に食い入ってくるようなニュアンスが、
今の映画には希薄ですね。

題名は「チャイナタウン」ですが、
映画にチャイナタウンは最後しか出て来ません。
主人公の私立探偵が、
以前刑事だった時に愛する人をチャイナタウンの事件で失った、
という設定になっていて、
「思い出したくない場所」として、
語られるのです。
要するに、人間の「思い出したくない何か」の象徴なのですね。
ちょっとしたことですが、
題名1つにもセンスがあります。

DVDには監督のポランスキーのインタビューが入っていて、
一番気に入っている場面は、
ニコルソンとフェイ・ダナウェイが、
レストランから出てきて、
車を呼ぶところだ、
と言っています。
ストーリー的には殆ど意味のない、
他愛のなく見えるカットです。

最初ふざけているのかな、
と思いました。

ただ、今回観直してみると、
普通1画面に入れない情報を、
強引に1カットにまとめていて、
それが意外に不思議な効果を出しています。
ふーん、ポランスキーはこんな所に拘るのか、
とちょっと不思議な気分になります。
天才の気持ちは凡人には分かりません。

この映画はラストが衝撃的なのですが、
元の脚本にはなかったラストを、
ポランスキーが強引に変えたのだそうです。
そう思ってみると、
ちょっと無理矢理な感じはあるんですね。
でもあのラストでなければ、
名作にはならなかったという気がします。

今日は僕の好きな映画の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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