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新型コロナウイルスの無症候キャリアからの感染可能性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナウイルスの不顕性感染.jpg
JAMA誌に2020年2月21日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の不顕性感染の可能性についてのレターです。

2月の報告なので、
現在では周回遅れの感じも少しあるのですが、
この問題についての現時点での知見を、
まとめておきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2)は、
そのSARS原因ウイルスとの遺伝子の相同性から、
肺炎などの下気道感染を起こしてから初めて、
感染力が生じるという先入観を、
流行の当初には専門家の多くも持っていました。

そのため、
咳や発熱など下気道感染の症状が出現してから、
患者さんを隔離することで、
周辺への感染予防も可能と考えられていました。

ところが、
その後の実際の感染の広がりからは、
軽症で発熱などの症状のない不顕性感染の患者さんからも、
人から人への感染が成立する可能性が示唆されました。

ただ、ここで問題となるのは、
不顕性感染と思われても、
実際にCT検査をしてみると、
軽度の肺炎像が認められるケースがあるので、
矢張り下気道感染が成立して初めて感染が成立するのか、
それとも下気道感染がなくても感染が成立しているのか、
そのどちらであるのか、ということです。

仮に肺炎があって初めて感染が起こるのであれば、
疑いのある事例では症状がなくてもCT検査を行って、
肺炎の有無をチェックすることにより、
隔離の対象者を絞り込むことが出来ます。
その一方で上気道や腸管において、
ウイルスが増殖することにより感染が起こるのであれば、
現状長期間隔離する以外、
感染の拡大を防ぐ方法はない、
ということになります。

上記レターの発表以前において、
CTで肺炎像が認められないような無症候性の感染者から、
感染が成立するかどうかは不明でした。

上記レターにおいては、
20歳の無症候性キャリアの女性から、
5名の家族への感染(クラスター)の事例を検証しています。

キャリアの女性は接触の時点で全くの無症状で、
CTでも肺炎像はなく、
他の家族に発熱などの症状が時点でも、
最初の鼻腔からのPCR検査は陰性の結果が出ています。
しかし、その後陽性が確認され、
中国でパンデミック初期の事例であったことより、
そのキャリアの女性が流行地域からウイルスを持ち込んだことが、
ほぼ確実と推測されるため、
この女性が無症状の状態で、
家族の感染を広げた可能性が高いと考えられました。

現状の理解で言えば、
キャリアの女性は下気道でのウイルス増殖はなく、
上気道のみのウイルス増殖もしくは腸管でのウイルス増殖から、
周囲に感染を広げたものと想定されます。
PCR検査の偽陰性は、
珍しいことではありません。

現状はこうしたキャリアの周辺への感染可能性を、
確実に判断するような方法はなく、
感染が拡大した状況においては、
人間同士の濃厚接触をなるべく減少させて、
感染自体の収束を待つしかないのが実状なのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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オダ@買取価値判定人

良い情報ありがとうございます。人から人へ。新型のさらに新型コロナの発生で来年以降も続くのでしょうか。収束したはずの中国からまた広がりを見せてます。終わりがないのか。経済ニュースが賑わせてますが、人の命と社会の崩壊とどうなるのか気になって眠れなくなりそうです。
by オダ@買取価値判定人 (2020-04-12 14:58) 

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